ヤマハ

2007年10月8日 月曜日

早嶋です。

ピアノメーカーのヤマハは、楽器を売ってなんぼのビジネスで、そのための土壌作りを絶えず行っています。これは、音楽人口を増やすための、ピアノ教室・音楽教室・エレクトーン教室(エレクトーンはヤマハ独自の製品)などの普及から開始されます。

経済が順調に上向き始めたていた当時、レクレーションに時間を費やす人口が増える、ということでヤマハはドメインをレクレーションに絞りビジネス拡大を行います。音楽もその1つでした。

ヤマハは、不断の努力を重ね、最高の品質を誇るピアノ製造技術を確立、音楽活動の普及も伴い、グローバル市場で40%のシェアを獲得するまでになりました。しかし、当時、トップの座に上り詰めたとたんに、ピアノ需要は年率10%も減り始めたのです。

ピアノの世界的な普及によって、コンサートホールから世界中の家庭の居間や子供部屋に約4000万台のピアノがあったのですが、買い替え需要も期待できず市場は頭打ち状態になりました。

当時は、市場成長の余力も無く、更に、韓国メーカーが低価格商品で市場参入するという状態。シェアを維持するために、価格競争をしても参入メーカーとドロドロの戦いになる。だからといって、高級品を市場に送り出したとしても新商品を購買する需要は望めず、効果は薄いと考えられていました。

さて、あなたがヤマハの社長だったらどうしますか?

ヤマハは当時の証券アナリストの撤退せよの声を無視し、事業売却も行いません。その代わり顧客のために新たな価値を創出するために熟慮を重ねます。

世界中のピアノの現状を把握したところ、4000万台の半数はホコリをかぶり調律もされていない状況でした。今後のピアノを習う人口も増加は見込めない。ヤマハが当時出した答えは、顧客価値を創出するために、更に優れたピアノを作ることよりも、既に手元にあるピアノに付加価値を付ける方法でした。

着目ポイントは、自動演奏ピアノ。当時の商品は、音の悪さが目だっていました。そこで、音を改善する事で本物さながらの演奏を録音・再生できるようにしたのです。当時は、この商品を自動演奏ユニットとして2500ドルで販売。調律もせずに放置されたピアノにユニットを取り付けるだけで、あっという間に一流ピアニストの音を再現できるようになる。これが市場からの需要を喚起します。

当時、斜陽産業とされていたピアノ市場、2500ドル×4000万台で潜在規模は1000億ドル。1987年4月にこのプロジェクトを開始し爆発的な売上を記録しました。コストの切り詰めや人員整理といった短絡的な発想ではなく、ひたすら顧客に価値を提供する新しい視点を求め、見事、戦略の再構築を行ったのです。

最近のヤマハは、1986年にスタートした大人向けの音楽レッスンをネット上で普及させています。モルタル上でもネット上でも、「ヤマハ大人の音楽レッスン」と同じカリキュラム、テキストで進行。

電子媒体の特性を最大に活用して、模範演奏を画面で確認できたり、練習用の伴奏付きカラオケやオンラインで表示される譜面や運指など演奏情報を見ながらの学習が可能です。レッスンに関しての相談や質問は、双方向のコミュニケーションが画面上で可能です。

斜陽産業と呼ばれても、常に顧客の視点で付加価値を提供することに着目してきたヤマハの姿勢は、どの産業、業種にも参考に値する行動だと思います。



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