早嶋です。
「公益」とは、行政にとっての利益であり、市民にとっての利益であり、そして環境にとっての利益である。これは、フィリップ・コトラーの言葉です。
マーケティングの原理とテクニックによって、公共分野に応用する事が可能です。当然、公共機関が市民に根ざしたアプローチを取ることが前提になりますが。
昨年の6月、夕張市の財政破綻が報じられました。これは、多くの自治体が財政難にある事を以前から叫ばれていたものの、同市の破綻は役所も倒産する時代だということで、エポックメイキングな出来事でした。
夕張市に限らず多くの公共機関が運営する施設は、これでは失敗して当たり前だな、もっと市民を基準にサービスを提供すると良いのに!と誰もが考えたと思います。
一方で、同じ北海道でも旭川市旭山動物園は連日の観光客を集める施設。檻の中で動物を閉じ込めるだけの動物園の発想を捨て、ジャングルやサバンナのように実際の動物の活動を見ることが出来るように工夫されています。
2000年9月にオープンした、ペンギン館では、4種のペンギンを飼育しており、360度見渡せる水中トンネルからは、飛ぶように水中を泳ぐペンギンを観察する事が出来ます。
2001年8がうtに完成した、おらうーたん舎では、檻と空中遊技場を結ぶ、高さ17mのロープを渡る尾らうー短の様子を観察できます。
2004年6月にオープンした、あらざし館では、北海道内の漁港をイメージした小さな漁船やテトラポットがあります。そして、館内にはアザラシの特徴的な泳ぎを観察することが出来る円柱状の水槽があり、筒の中を行き来するアザラシを観察できます。
公共施設とは思えない、施設全体が来場者、つまり顧客視点で設計され運営されているのです。そして園長をはじめ職員の一人ひとりが来場者の気持ちに応え、動物を魅せるための綿密な作戦を練って提供しているのです。
マーケティングは民間企業の中で行われるものと認識されがちですが、シンガポールや先の旭川市旭山動物園のように公共分野でも活用する事が出来ます。フィリップ・コトラーの著書、Marketing in the Public Sectorでも、マーケティングで変えたかったものは一企業ではなく社会そのものであったということが記されています。