早嶋です。
鉄鋼大手にとっても非常に厳しい1年になると思います。7年ぶりにベアゼロの春季交渉という記事が日経にありました。
ーー2020年3月9日 日本経済新聞
日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の鉄鋼大手3社は、2020年の春季労使交渉でベースアップ(ベア)に相当する賃金改善を見送ることを決めた。ベアゼロは7年ぶりとなり、20年度、21年度とも見送る。
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記事には世界の景気停滞の影響が示されていました。自動車などを中心に鉄鋼需要が低迷しているのです。特に生産国の中国は一連の貿易摩擦から今のコロナの影響で経済が著しく冷え込んでいます。
先日のニュースで日本製鐵の2020年3月期が最終赤字4,400億の赤字見通し。というのがありました。そこで呉製鉄所を閉鎖するという内容です。業界全体に同じように景気の波が押し寄せ、JFEスチールや神戸製鋼も同様に業績は悪化しています。
業界団体のサイト等をみると、鉄鋼メーカーの組合印は高炉大手だけでも約5万人いて、鉄鋼、造船、重工業などの基幹労働組合全部を入れると約20万人以上で自動車や情報通信産業などについて多い業界です。
では、なぜ鉄鋼業界にここ1年が非常に厳しくなるかです。日本の粗鋼生産は約1億トン/年で、インドが1.1億トン/年。そして中国は約10億トン/年の生産です。日本は主要な鉄鋼メーカーは数社ですが、中国の場合は100社くらいあり、去年から続く米中貿易摩擦に続いてコロナの影響で生産した粗鋼がダボついている状況です。
この状況が続くと考えられる状況は、中国以外に対して粗鋼を投げ売りすることです。現在、1トンあたりの鋼材は1トンあたり8.5万円前後で、中国の鋼材は7万円前後です。仮に、中国の粗鋼が中国外の市場に出回れば、ただでさえ鉄が余っている状態でこの景気後退局面ですから鉄の生産が不要になります。
仮に中国の経済が3割り程度ダウンしたとすると、必要な鉄が比例して3割あまると仮定すると3億トンもの鉄が余ってしまうのです。この鉄の量は日本の年間の生産量の3倍ですから、目も当てられない状態が来るかも知れません。
ベアゼロは直近の日本経済のことだけではなく中国の鉄の需要も加味した数字だと思います。少し、ここ1年が不安です。
参照:World Steel Association