早嶋です。
2000年頃と比較して政治、経済、社会、文化、技術、地政学など全ての面で世界は変化しています。気候変動や環境破壊、それに伴う飲料水の不足、マイクロプラスチック問題、移民の増加、少子高齢化、所得格差、ポピュリズムや原理主義の台頭、テロの脅威など枚挙にいとまがありません。
そして『歴史は繰り返す①②③』でコメントしてきたように世界中の民主主義国家が上記の問題に対処出来ないとみなされはじめています。その結果、ヒトやモノの移動を極端に制限する保護主義が台頭しています。そしてその推進と共に独裁的な政府が次々に誕生しています。米国、ブラジル、インド、インドネシア、フィリピン、マレーシアなどの民主国家でも確実にこの傾向を確認できます。一方でスーダン、チリ、エクアドル、ボリビアでは不満を募らせた国民が反乱を起こし全体主義に基づく政治基盤が崩壊している状況も観察できます。
どちらの場合でも問題の本質は問われず放置されたままで、変わり民間も公的債務も膨れあがり記録的な水準にまで達しています。各国は中央銀行が超低金利状態を維持して破綻しないように援助をひたすら続けるのみです。
得に欧州の国々では顕著です。経済成長の急速な失速により未来の雲行きが怪しくなっています。これに米国の独裁的な動きが加わり、従来の米国を頼る防衛が成立しなくなっています。結果、英国のEUの離脱、ハンガリーやポーランド、そしてオーストリアなどのポピュリズム政権が盛り上がりを見せています。
これは非常に危険な徴候です。独裁制が不健全であることは皆が知っている史実です。民主主義と異なり少数の限られた人々によって意思決定が繰り返されるため最終的には多くの過ちが起こるのです。また、社会が豊かになれば中産階級が自分の財産を保護する傾向が強くなり独裁者の恣意的な意思決定に意義を唱えたくなります。いずれにせよ長期間続く独裁制は少ないのです。
上述した現象は日本にも多大なる影響を与えると考えます。保護主義による国際貿易の縮小は経済に打撃を与えます。国内では少子高齢化、女性の社会的な地位向上、エネルギー源の確保、北朝鮮などの脅威など複数の厄介な問題を解決する必要があります。
従来は米国が世界の警察の役割を担っていましたが今後は頼りに出来なくなります。米国の内向きな態度はトランプ大統領が別の大統領になっても続くでしょう。日本は日米安全保障条約の有効性を確認し、自国の防衛をゼロベースで見直す、地政学的な敵国に対しての抑止力を真剣に検討すべき時期にあります。
戦後70年日本は米国の顔色を常に伺っていましたが経済活動の中心は大西洋から太平洋に移動しています。中国、韓国、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンなど隣国と友好関係を強めることは太平洋からの利益を得る必要条件です。そして引き続き日本が持つ技術、得にロボット工学やナノテクノロジーなどの先端技術に投資を続けることも大切です。
これらの技術を破壊を促進する方向に用いてはいけません。あくまでも全体を包括した、将来に意味のある技術としての活用が望まれます。それは今を生きる発想から、次世代の利益を守るための行動に切り替えることです。簡単では無いでしょうが、皆がそのような行動に切り替えることができれば地球は素晴らしい環境を維持する可能性が高まります。国や地域、企業や個々人が自分の子供や孫の世代のことを考えて思考して行動する。そのための先進国の政府と世界をリードする大企業の責務は大きいのです。