脱ドンブリ勘定

2017年12月9日 土曜日

早嶋です。

中小企業で数値目標を設置する企業は多いですが、殆どがドンブリ勘定しています。例えば、売上と利益の目標はあるのですが、その目標を事業部毎に細分化して管理している企業は少ないのです。大企業の社員からすると当たり前でしょうが、当たり前のことをちゃんと行うことは案外と難しいのです。

例えば、K事業、P事業、S事業、M事業の4つの事業を展開している企業をAとします。Aは2018年度の目標設定を売上15億、営業利益を13.5%の2億と目標設定しました。根拠を聞くと、過去5年間の売上が15億前後で営業利益が1億前後と変化がなかったから来年からは信用を増したいとのことで営業利益を倍にしたいという理由です。

リーマンショック前後の売上は17億を超えており、営業利益は2億円を達成していた実績もあり、経営者は難しくないとの自信を見せています。また、近年の生産性向上を全社員に普及しており、達成は可能だと話しています。

そこで社長に質問をしました。K、P、S、Mのそれぞれの売上目標と利益目標はいくらですか?と。すると、しばらく考え込んだ挙句に帰ってきません。設定していないのです。毎月の月次を見ると、部門ごとの売上は明確に管理されているのですが、K、P、S、Mと事業毎のコスト管理はかなりざっくりしていてドンブリ勘定になっています。

また、KとMは企画や営業を一緒に行い、PとMは製造と企画と営業が一緒に事業を行っています。従って、それぞれの事業で経費をどの程度使っているのか?などは正確に把握出来ないといいます。また、A社は本社とは別に視点が7箇所あり、そこにかかる固定費や別の経費は本社で一律に管理しているため、エリア毎の経費もよくわかっていません。

そこで手をつけた作業は数字の按分です。K、P、S、Mと本社というくくりでざっくり分けました。そして、4つの事業が過去数年間でどの程度売上を計上したかを整理しました。また、その事業の売上を上げるためのコスト構造を1つ1つ整理して紐解き、本社共通や一部共通していた経費も過去の流れ等を鑑みて按分するルールを決めて管理していきました。

すると、Kは1億(売上は5億)、Pは1.5億(売上は5億)、Sは0.5億(売上は1億)、Mが△1億(売上は4億)の営業利益を出していることがわかりました。そして、本社経費が1億かかってることがわかりました。

全体の営業利益は、KとPとSが稼いでいるのですが、Mが1億の赤字を出し、本社経費が1億かかっているため、結果的に営業利益が1億になったという内訳だったのです。それぞれの事業の中身を見れば、Mの事業は将来の投資を含めているので赤字であることは理解されていましたが、0.5億程度との認識でした。また、本社経費は少ない人数でかなりだぶついていることもわかりました。

そこで、2018年は売上を2017年と同じと考えた場合でも、経費をセーブして利益を明確に2億出すことを目標にしました。具体的には、Mの営業利益を△0.5億に押さえて、本社経費を0.5億で運営することです。また、K、P、Sもコスト管理を徹底して見直したところダブリが多くあり合わせて0.5はセーブすることがわかりました。

と、少し内部の数字を細かく見ただけで実に1.5億のセーブが出来たのです。もちろんシミュレーションの世界で、今回は売上に対して一切触れていませんが、それでも目標を設定して、細分化するだけで、事業の見通しは少しは良くなるのです。ドンブリ勘定のままではなく、来年こそは戦略にもとづいて数値管理を徹底していきましょう。



コメントをどうぞ

CAPTCHA