ものが溢れている時代に、ものが足りていない、手に入りにくい、欲しいけど中々買えない。これまでのマーケティングでは、増産再生を整え、流通店を増やして販売機会のロスを無くす方向に動いたでしょう。しかし、逆張りで、敢えて不足の状態を維持。敢えて顧客が買い求めにくくする動きをしている。あえいて生産量を需要よりも少なめに提供する企業があります。
みんなが知っているが、持っている人が少ない。これまでのマーケティングではプロモーションの目的が購買を促すことでした。従って、その商品の特徴や販売先、場合によっては商品と価格を表示することが良しとされていました。しかし、ただ単にイメージを示して、商品の情報や販売先の情報など何も載せない企業があります。
そのような企業が提供する商品は非常に高価。しかし、誰も知らない商品を、一部の人が持っていても、それはその人の中での価値はありますが、やはり周りの人が知っていて、高いものを持っている、希少なものを持っている、と感じてもらったほうが嬉しいでしょう。そのために認知はどんどん増やし、一方で所有を減らすという逆張りを行っているのです。
顧客は王様で顧客の声に耳を傾けることで製品を改良して良い物を作るという取組がマーケティングの中で重要な活動とされていました。しかし、あまりにも顧客の要望を聴き過ぎると平均的な商品になり、その商品そのものの特徴や機能が失われてきます。標準を目指すと尖ったものが良い人は離れ、標準的なものは他との違いがなくなり価格の勝負に陥ってしまいます。尖ったモノを求める人は価格よりもその商品や企業にロイヤリティを感じる場合が多いので価格競争から逃れることができます。
そのために顧客の声をあまり気にしないで自社の「らしさ」を徹底的に追求する企業が逆に一部の信者から信奉される現象が観察されます。今回のVWの問題に対して、フェラーリやポルシェは環境に配慮をすると言っていますが、ランボルギーニーは、これまで通りの速いクルマを作ることを重視し排ガス規制は守らないことを公言しています。
商品は全てにおいて完璧を目指すのではなく、ある程度の欠陥があるから特定の信者には受け入れるというのがあるのです。従って、そのような企業は他の企業のファンなどに目もくれず、ひらすらに自社の熱狂的な顧客層のみにフォーカスして、自社の「らしさ」を貫いた商品を提供し続けていきます。
上記のような取組は、一部のラグジュアリーブランドが行っている戦略です。従来のマーケティング手法からすると全く正反対で逆張りですよね。しかし、考えて見ると従来のマーケティング手法は世界であるいは、日本でシェアが1番から数番目くらいの企業には活用できますが、それ以外の企業は基本的にSTPを徹底してもうまいポジションは作れません。
であれば、極端にラグジュアリー企業の考え方やフィロソフィーを更に参考に、自社の戦略を立て直すというのもありです。ポイントは、一つの視点にとらわれないで、自社の方向性を考えた上で幅を持った思考があることが大切ですね。