学生の頃、ソウル近郊の露店に言って、偽物のロレックスを買った。通常は40万円以上の時計が当時の価格で5,000円程度。見た目も本物と何も違いが分からなかった。当然、当時は本物を手にとることも無かったが、その偽物の時計をしているとなんだかすごく得した気分になった。
帰国して、友達と会っているときに時計の話題になり、つけている時計の話題になった。偽物とは言わずにロレックスの話になった。露店で買ったときの高揚感は一切無く、自分が嘘偽りの人間に感じて、一気に気分が悪くなった。
何だろうか、この感覚。人は自己シグナリングと言って、意識的にあるいは、無意識に自分がどんな種類の人間なのかを自分に伝える行為をとっている。その行為を判断するものに、自分が感じたこと、直近の行動や感情が左右されるのだ。
プレゼンのときやライフイベントで大切なときは必ず妻からもらったハンカチやネクタイを身に着けている。あるいは、バックの中に必ず入れるようにしている。すると、なぜかいつもよりも堂々と、交渉がすすんだり、相手の話を慎重に吟味することが出来ている。これも自分で意識的に、あるいは無意識にシグナルを送っているのだ。
学生のときの体験は、貴重だ。モノのあこがれが、結果的には自分を全否定するという最悪の結末になったのだから、得るものは無いなと思っていたが、このような体験の積み重ねは人の感情を理解しよとするときに多いに役にたっている。