ブランドと宗教

2012年7月3日 火曜日

連帯感、明確なビジョン、敵に打ち勝つ力、感覚への訴求、物語、布教活動、シンボル、神秘性、儀式。宗教を研究した学者さんがまとめたものです。宗教に共通する特長や性質を9個の視点で説明されています。

ランニング中に、同じブランドのウェアを履いている人がいたら、思わず会釈をしてしまう。同じクルマを運転している人がいたら、先に譲ってしまう。自分の好きなブランドを持っている人に連帯感を感じる。そう、ナイキやマクドナルド、BMWやバスキンロビンスなど、あらゆるブランドが連帯感を生む場合が多いのです。そしてこの連帯感が購買行動に大きな影響を与えます。

ジョブスは80年代中盤に「人間こそが、世界の変革の創造者だ。よって、人間はシステム構造に従属するのではなく、その上に立たねばならない」と言いました。今もアップルが追い求めるビジョンは変わらないでしょう。成功している企業やブランドは明確で力強い使命感を持っています。アマゾンのビジョンは「世界中のドキュメントを整理すること」強烈です。

対立する力。宗教の対立はいつの時代も絶えません。これは歴史の教科書を見ても、昨今のニュースを見ても納得します。そして戦いに勝った宗教が結果的に残っていることになります。世の中から見るとこの対立の構図はブランドのロイヤリティを高める働きがあると思います。アップル対ウィンドウズ。ナイキ対アディダス。マクドナルド対バーガーキング。コーラ対ペプシ。アサヒ対キリン。トヨタ対ホンダ。ドコモ対ソフトバンク。対立軸が存在することで自分が嗜好するブランドの強敵を悪く言う。それによってロイヤリティが高まるのかも知れません。

教会ではパイプオルガンが響き、光の演出があり、高い空間に張り詰めた空気が込められています。寺院にはお香の香りに自然の姿を切り出した庭、そしてお経のコーラスが響きます。これは視覚に加えて他の五感をフルに刺激して、その宗教を体全体で感じさせています。ノースフェイスのショップにはユーカリの香りや森の香りに溢れ、神経が高揚するBGMが流れています。ディスプレイだけのプレエンに加えて、臭覚も聴覚も刺激されます。ブランドを感じる瞬間、見た目や音に加え、他の五感もからみ合っているのです。

モーゼが導くと、あれ狂う水も静寂が訪れ一筋の道が割れるように水が引いていきます。ブッタが他界する時、菩提樹の下にあらゆる動植物が集まり涙を流します。聖書、コーラン、仏典。多くが物語として書かれ、その考え方を説いています。信条自体が物語になっているのです。成功しているブランドにも物語があふれています。ディズニーの世界は物語そのもの。ギネスを飲むのに119秒まつための儀式はストーリーとして語られます。

布教活動も無視できません。世界中にエバンジェリストが宗教の信条を普及するように、ブランドを浸透する企業は知恵をひねります。シュガーシンクは無料で使えるクラウドの領域を紹介することによって増加させます。紹介された方は、新しくそのサービスを利用して、いつしかフリーミアムの範囲を超えて金銭対価を払うようになります。GoggleはGメールを普及させるとき、招待によってのみでした。友人からの招待は特別な意味があり、そのロイヤリティが高まることがあるのです。1000万人を超えたあたりから自由にアドレスを取得できるようになったそうです。

十字架、仏像、天使。宗教にはアイコンが存在するようにブランドにもシンボルマークが存在します。そして、強いブランドのアイコンはシンプル。アップルのアイコンも初めはやや複雑でしたが今ではかなり洗練されています。MacBookAirを使用していると、PCの表の部分が光り、ロゴが浮かび上がります。ブランド=ロゴ!と勘違いするマーケティングの会社が存在するほど、シンボルが与える影響は大きくなるのかも知れません。

コカ・コーラの秘密の製法。その味を知っている人は世界に2人いて、常に真反対の地域で生活をしている。その秘伝のレシピは本社があるアトランタの銀行の金庫に厳重に保管されている。タウリン1000mg配合のリポビタンD。そのボトルが300億本も消費されているのは記憶に新しいニュースだったが、多くの人がタウリンがどんな効果を持つのか知らない。覆面プロレスラーはその素顔をトップシークレットとして、そのような生活を送っているのか?私生活を見せない。私生活と言えばプリンセス・テンコー。もはや存在自体が神秘だ。でも人はその神秘性に惹かれてブランド・ロイヤリティが高くなるのでしょう。

ブランドと宗教。多くの類似点が存在している。



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