中小企業から次のステップで拡大を目指すときに、注意したほうがよいこと。それは、商品の拡大があると思います。ポジショニングで著名なジャックトラウト氏は分裂の法則として、このことを紹介していました。
多くの場合、カテゴリーを一気につくるのではなく、ひとつの商品から始まります。車だったら排気量を大きくしたり、セダンから四駆、スポーツカーへと領域を広げていきます。グーグルでさえ検索に始まり今では様々なサービスを展開して、分裂しています。うまく資本を大きくしてマネジメント出来る場合は別ですが、多くの企業はその能力を有することなく、分裂することによって自社の特徴を損ねていっていると思います。
提供する側からすると、選択肢が多いほうが消費者が喜ぶ!という事で分裂を繰り返すのでしょう。一方で、消費者は選択肢が多すぎて困惑するという経験にうんざりしているかもしれません。選択肢がありすぎて、何でもすぐに手に入れられる。この環境に慣れると商品の物欲がわくどころか、関心を失う結果につながります。意思決定能力が鈍り、過剰なまでに自分の購買に自身がなくなるのです。
行動心理学では、チョイス・オブ・パラドックスといい、6種類程度を越える選択肢があれば、逆に選ぶストレスが増えて心地が悪くなるといいます。結果、購買するのを諦めるのです。この背景には、色々ありすぎる中から自分が選んだ商品が間違った商品だったら嫌だなーという具合です。
今、商品がどのくらい多いのか?というのを考えるとき、近くのスーパーマーケットを考えると良いでしょう。約30000満点もある商品が所狭しと陳列されています。そして、その中で購入している家庭用品は150点くらいでしょう。これをかんあげると、他の選択肢はいったい誰のために用意しているのか?と考えてしまいます。
では、なぜ分裂を繰り返していくのでしょうか?ひとつはターゲットが曖昧なことがあると思います。もしくは、誰が購入しているのか?を正しく把握していないのかもしれません。あるいはそのような発想する持っていないのかもしれません。この結果、どっちが良いのかな?そう、両方つくろう!となるのかもしれません。ここまでひどくなくても、ターゲットの枠を広くしすぎてあれもコレもと考えるのでしょう。
もうひとつは、小さな領域で成功をすると、次のより大きな領域に挑戦したくなるのかも知れません。経営学の世界では、小さな池の小さな魚。小さな池のが大きな魚と表現します。このとき、1)そのまま、2)大きな池に移る、という選択肢を経営者は考えるでしょう、間違いではありません。しかし大きな池にはもともとから住んでいる大きな魚が住んでいる事を忘れてしまいます。結果、分裂して体力が弱っている状態で大きな魚との競争になりパクリと食べられてしまうのです。
小さな池の大きな魚だったら大きな池の魚は興味を持たなかったでしょう。さすがに、そこまで貪欲ではなかったからです。しかし近年は、大きな池の大きな魚ですら小さな池を求め初めています。ここにフルスペックで戦う大きな資本と真っ向から勝負するとどうなるのか?結果は目に見えています。
それよりも分裂を最小限にとどめた商品で戦っていたほうが遥かに勝率が高くなると思います。
先日は、ありがとうございました。
消費者にとって、「選ぶストレス」、確かにありますね。量販店で何時間もねばり、結局買わない、という行動をとる人も多い。ぼくなどは、その時間、本の数十ページでも読めばいいのに、と考えますが……。
「小さな池の小さな魚」は、大きな池でなく、「元の小さな池の(強い)小さな魚」を目指すべきですね。
こちらこそありがとうございました!
先日おはなしした出版の件、とある出版者がはなしにのってくれましたので8月か9月を目処に実現できると思います。その時は、また相談させていただくと思います。
チョイス・オブ・パラドックス。何かを考えると、裏返しがある。実に面白い世界だとつくづく思います。