タックスヘブン。別名ではオフショアなどとも呼ばれ、無税、若しくは極めて税制を低くする事で、企業や富裕層の資産を誘致している国や地域を指します。
例えばF1で有名なモナコ公国、サンマリノ共和国は有名です。他にも、カリブ海地域のバミューダ諸島、バハマ、バージン諸島、ケイマン諸島などが該当します。中近東にもあります、ドバイやバーレーンなども政策としてタックスヘブンを行っています。アジアでは香港やマカオ、シンガポールも実際は税率が極めて低いため、外資をうまく誘致しています。
国による税制の違い、世界がフラットになる以前は、一部の人にしか問題が無かったでしょうが、現在はそうはいきません。例えばEUにしてみれば大きな悩みの種です。
個人所得税でベルギーは50%、ドイツは45%です。これに対して先に挙げたモナコやリヒテンシュタインなどは所得税がゼロです。リヒテンシュタインは欧州経済領域(EEA)に加盟していますがUEには加盟していません。通貨はスイス・フランです。モナコもEU加盟国ではありませんが、協定により通貨はユーロです。
ヨーロッパという同じ地域に国によってこれだけ税率が異なれば、企業や富裕層の行動に影響を与えるのは当然です。極端な話、税金を納める額が少ない国に移動しよう!と考えるのです。
EU内では強制的にハーモナイゼーション(調和)を命じることが出来るでしょうが、隣接しているモナコやリヒテンシュタインなどのようなタックスヘブンとの税制の矛盾をどのように対応するのか?大きな悩みの種です。
ではタックスヘブンは簡単に、税率の調和に応じるでしょうか?否です。多くのタックスヘブンは国の人口も少なく土地もせまいです。そのよな国がお金を集めるための手段としてタックスヘブンを行っているからです。
実際、多くのタックスヘブンや税率の低い国には、課税逃れに集まる企業や富裕層の受け入れ先となっています。税金免除を目的とした外国企業のペーパーカンパニーが集中して、リヒテンシュタインでは人口よりも法人の数が多いとも言われているくらいです。タックスヘブンの国々は、このような企業や富裕層からの税を集めて財政を支えています。そのため、その国に住んでいる一般の国民には所得税や相続税がありません。これがまた富裕層を引き付けるというわけです。
税の話は所得税にとどまりません。もっと大きいのは法人税です。EUの平均税率は25%程度です。アイルランドが12.5%程度でイギリスが33%と様々です。世界がフラットになり多国籍化が進めば、どうなるのか?企業が税金の安い国を選ぶという行動になるでしょう。
日本人の感覚ではいまいちピンとこないでしょうが、EUでは企業の法制が統一され、物流も整っています。また会社で働いている社員も多国籍であるため、本社がどこにあっても大きな問題では無いのです。企業はどのような動きをするのか?不動産コストや人件費コストが安い方向を探すように、当然ながら租税コストも安い方向を探します。結果、法人税が安いスイスに本社を置く企業が増えているのも簡単に理解できることです。
これは法人税が高い国にと言っては、将来的に見ても対策が必要です。事実、ヨーロッパの国々では法人税が高い国は法人税を下げる動きを見せています。先日、訪問したドイツも然りです。2007年まで法人税率が40%と日本並みに高かったのですが、多くの企業が本拠地を他国に移す計画があったためドイツの国税局は2008年から法人税率を10%近く下げ、実効税率では28%~29%台になっています。
国が企業から選択されているのです。対して日本はどうでしょうか?めったなことで海外に本社を移さないですよね。ある意味政府がやりたい放題にしていますが、ヨーロッパでは通用しない事が分かります。
早嶋聡史