海士町の挑戦

2009年5月25日 月曜日

早嶋です。

本日も東京でした。朝から経済産業省の地域経済産業グループで行っているソーシャルビジネスについての会議に参加しました。ソーシャルビジネスとは社会的な課題解決を目的とした持続的な事業活動です。従来のボランティア活動とは異なり、社会性に加え、事業性と革新性を持ち合わせます。

今回は、以前もブログで紹介した岩本さんが海士町の挑戦についてお話されるということなので、ちゃっかり同席させていただきました。

海士町は島根半島の沖合60kmに位置する隠岐諸島のひとつで平成の大合併のさなか、島の生きる道を自分たちで守る!という英断を行い単独町政での自立の道を歩んでいます。

そんな島の課題は2つありました。人口問題と税制問題です。1つめの人口問題は、昭和25年には7000人であった人口が現時点では2400人に。そして、超少子高齢化が進んでいるのです。海士町の人口ピラミッドと日本の人口ピラミッドと比較すると0~4歳、20代と30代が激減しています。

2つ目の課題、財政問題です。平成16年の三位一体改革の本格開始によって、島の雇用や経済を支えてきた公共事業が大幅に削減されます。そして、地方交付税等の資金源が突然かつ大幅に削減されるという事態に直面します。

自立の道を決断した島は、住民と行政、そして議会が一体となって「守り」と「攻め」の両面作戦を立案し実行に移しています。

「守り」の戦略
自身の身を削ることを始めないと改革は支持されない!というスローガンの基、三役の給与を5割~4割カット、議員の報酬も4割カット、教育委員の報酬を4割カット、職員の給与も3割~16%カットしました。これによって日本一給与の安い公務員(H17)として注目されました。

職員が自ら給与カットを行う姿勢は村をまとめる力を生みました。バス料金の値上げや補助金の返上、各種委員の日当の減額の申し入れなどが住民から出てくるなど、危機感が島全体で共有されます。

「攻め」の戦略
島が独立していくためにはコストを削減するだけではいけません。そこで、生き続けるための攻めの戦略がはじまります。ポイントは2つで、外貨の獲得に向けたモノづくりと未来を創るためのヒトづくりです。

外貨獲得に関しては、攻めの3部隊として位置づけた交流促進課、観光と交流を融合することをミッションとする。地産地商課、第一次産業の振興をミッションとする。そして産業創出課、新産業と雇用の創出をミッションとする。の3課が立ち上がりました。

特に一次産業の振興では、海士町の豊かな資源を目玉に地域資源を活用した島ブランドをうまくプロデュースしています。例えば、「サザエカレー」。通常は牛肉か豚肉を入れるカレー。島では肉が貴重だったため、気軽に取れるサザエを具に入れるのが常識でした。これを島から輸出することによって、その奇抜性が受けたのです。

例えば、「春香」。これは、島のブランドいわがきとしてプロデュースされました。東京でのオイスターバーブームに目をつけて、Iターンで帰ってきた若者がうまく事業かしています。

例えば、「CAS」。これはCell Alive Systemという新技術です。島で取れた鮮魚や魚介類を瞬時に凍結することによって細胞を活かしたまま出荷が出来る技術です。このCASを活用して、離島での物流のハンデを乗り越えます。

他にも海士町のイカ「白いか」、海士町の牛「隠岐牛」、海士町のハーブティ「福来茶(ふくぎちゃ)」、島の伝統を継承して復活させた浜塩である「海士乃塩」など次々にヒット商品を開発します。

そして、流通は直販モデルで、島の行商人が各地のイベントで売り歩き、直接の声で島のアピールを行います。ここには上手くパブリシティーとWebを融合させてお金がかからないプロモーションを確立しています。

そして、もっとも注目を集めているのが未来の創造のためのヒト作りです。例えば、将来的に島に戻って島の活性化に取り組む若者を増やすために非常にユニークな教育方針を打ち出しています。求められる人材を島の老若男女で集まり日々ワークショップを重ね、「地域で生業・産業を自ら創りだせる自立人材」としました。そのために必要な力は、「愛郷心を持ち、自ら考え、ともに行動し、よりよく課題を解決する資質や能力(人間力)」としました。

そして、上記の人材を創るために、人間力の定義を細分化して智・結・情・地・健・志と6つに分け、更に細分化し16の力に分け島の子供たちの能力を定量化しています。これらの分析結果をもとに「学力向上読書活動」「交流」「キャリア教育」「食育」「ふるさと環境」と5つの重点テーマに基づいた教育を提供しています。

例えば、小学6年生は1年間をかけて島の行政に課題と解決策を提案することを授業に取り組み、その提案を議会で報告します。更に、素晴らしい解決方法に対しては、実際に実現していくという取り組みです。

例えば、中学生が学校エコ改修というテーマに取り組み、環境庁の強力を得てエコスクールを実現しました。他にも、島の中学生が島での取り組みをまとめて、修学旅行の際に、東京大学の学生に講義を行う取り組みも行っています。

先に示した5つの重点テーマを幼稚園から高校生まで通して提供するため、現在ではUターン希望者が中学1年生で4人程度だったのが13人と5割以上が島での活動を将来、志しています。

大きな方向性は、岩本さんが示していて、すべての活動はワークショップを通じて島全体で意見を出し合い、集団の知を利用して、全員が取り組んでいます。

海士町が取り組んでいる課題、人口問題と財政問題は日本の縮図です。1つのリーダーシップの基、組織が一致団結していけば解決できない課題は無くなるのです。今後とも、海士町の情報に関してはアップデートしていきます。



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