ベネフィット その2

2008年12月19日 金曜日

早嶋です

ブログ「ベネフィット」でもコメントしましたが、再び違う視点からコメントします。

benefitマーケティングの話を聴くと必ず「ベネフィット」という言葉を耳にするでしょう。顧客は対価を支払う代わりに何かを購入しています。それはソリューション自体かも知れませんし、ソリューションを通して顧客が得られる何かかもしれません。その「何か」がベネフィットです。

例えば、お昼休みに急ぎでご飯を食べたい人が吉野家の牛丼を食べました。顧客は牛丼に対価を支払っていますが、「短時間でご飯が食べられる」というベネフィットを購入しているかもしれません。

例えば、仕事が終わって毎晩おうちでスーパードライをシュパッと空けて飲んでいます。顧客はスーパードライに対価を支払っていますが、「今日も1日お疲れ様!」という自分へのご褒美を購入しているかもしれません。

例えば、初めてのボーナスでロレックスの時計を買いました。顧客はロレックスの時計に対価を支払っていますが、「自分でもやっとロレックスが買える身分になったんだという自己満足」を購入しているかもしれません。

マーケティングで常に考えなければならない事は、顧客にとってのベネフィットです。マーケティングの大御所、セレドア・レビット氏は言っています。「顧客はドリルを買っているのではなく、8インチの穴を買っている」と。顧客はドリルがほしかったのではなく、ドリルを使って8インチの穴をあけたかったのです。もし、8インチの穴があくのであればドリル以外のものでもよかったかもしれません。

商品、つまり企業が顧客に提供する製品やソリューションはベネフィットを満たすための1つの提案にすぎません。顧客は、自分のベネフィットを自分の制約条件の範囲内で満たすものを選択して購買しているのです。

ベネフィットを考えるときに、大きく2つに分類できると考えます。1つは機能的なベネフィット。もう1つは感情的なベネフィット。機能的なベネフィットはスペックと言い換えると分り易いでしょう。また、感情的なベネフィットはメリットと言い換えると分り易いでしょう。

例えば、吉野家の牛丼の場合。機能的なベネフィットは、早い、安い、旨い、です。そして、感情的なベネフィットは、ある人にとっては、短時間でご飯が食べられる、です。

例えば、スーパードライの場合。機能的なベネフィットは、コクと切れ味、です。そして、感情的なベネフィットは、ある人にとっては、今日も1日お疲れ様!、です。

例えば、ロレックスの時計の場合。機能的なベネフィットは、機械式時計の正確さ、です。そして、感情的なベネフィットは、ある人にとっては、自分でもやっとロレックスが買える身分になったんだという自己満足、です。

機能的なベネフィットは、商品(製品やソリューション)があれば、特定できますが、感情的なベネフィットは、商品と顧客がセットでなければ得的できませんね。上記の例でも、「ある人にとっては」と毎回限定している理由はそれです。

つまり、感情的なベネフィットを考える事は、常にその商品と顧客を考えることになります。これが実に意味があることなのです。

例えば、私はあるセレクトショップを贔屓にしていて、時間があればそのお店に立ち寄ります。そして、そのセレクトショップ、同じ地域に2店舗あります。片方はそのセレクトショップのフランチャイズでデパートの中に入っています。片方はおうちの近所の路面店です。

フランチャイズのお店に行くと、必ず店員さんが声をかけてきます。一見、良い接客のように見えますが、その声というのは、毎回必ず機能的ベネフィットの連呼です。つまり、一度手に取った商品の商品スペックをつらつらとマシンのように話始めるのです。顧客の様子を考える様子は一切ないのです。

一方、路面店では。手に取った商品の話をすることはあまりありません。近況や商品とは全く違う話をしています。もちろん、店員さんに商品のことを聞けば、パーフェクト以上に教えてくれます。早嶋にとっての感情的なベネフィットは、まさに路面店でのコミュニケーションなのです。

ちなみに、フランチャイズのお店に行くことはありますが、いいな!と思ってもそのお店で買うことはありません。必ず、路面店で同じものを探して購入しています。なぜでしょう?これが機能的ベネフィットの提供と感情的なベネフィットの提供の違いだと思います。

機能的なベネフィットのみを求める顧客と感情的なベネフィットを目的に購入する顧客では、価格に対する感応度も違います。機能的なベネフィットは、機能が特定されているので、他の商品と比較していくうちに最終的には価格という点でのみの比較になるからです。一方、感情的なベネフィットで購入する場合は、その顧客が抱く感情的なベネフィットはその商品からしか得ることができないから、価格反応度は鈍くなるのです。

例えば、薄型テレビを購入しようとしています。家電量販店に行けば、同じ32インチのテレビであっても、その商品ライアップに圧倒されます。薄型テレビで32インチという機能のみで購入をしようとすると、おそらくその違いがわからず、最終的には価格の安いもの、というようになるかも知れません。

しかし、薄型テレビの中でも、「世界の亀山」というシャープに思い入れのある人は、シャープのロゴが付いている薄型テレビか、マニアックな人であればシャープが液晶部品をOEM供給しているメーカーのテレビの選択になるでしょう。他の商品よりも価格が高いから買わない!という選択肢は無く、また、あったとしても機能的ベネフィットのみで購入する顧客よりも価格の優先度は低くなるでしょう。

ベネフィット。簡単な概念ですが、マーケターにとってはとても奥深い概念だと思います。



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