新規事業の旅159 車社会

2025年2月24日 月曜日

早嶋です。約3500字です。

日本社会は、依然として自動車に依存する。その理由は以下のデータだ。

(車の保有)
2023年の自動車の世帯保有率の調査では、77.6%で、約8割の世帯が自家用車を所有していることになる。特に地方圏の中小都市や家族形成期から成熟期の世帯は、この割合が8割を超えている。因みに、乗用車を複数台保有している世帯の割合は35.7%と報告されている。首都圏周辺や地方の小都市、家族成熟期の世帯で特に高い傾向が見られる。

(通勤通学の利用)
国勢調査によれば、通勤・通学者の46.5%が自家用車を利用している。 地方部では自家用車の利用率が高く、例えば山形県では77.6%、富山県では77.4%だ。一方、都市部では公共交通機関の利用が主流で、東京都では自家用車の利用率が9.4%と低く、鉄道・電車の利用率が44.5%と高い。

(高齢化の移動手段)
60歳以上の高齢者の外出手段として、「自分で運転する自動車」が56.6%と以前と多く、次いで「徒歩」が56.4%となっている。日本は、特に地方部や特定の年齢層において、自動車への依存度が高いのだ。都市部では公共交通機関の利用が主流であるが、日本を代表する地方と高齢者の自動車に依存する生活が現実なのだ。

(少し突っ込んで車の保有について)
日本の自動車の世帯保有率は、地域によって大きく違う。特に、東京都とそれ以外の地域、さらに東京都内でも23区内とそれ以外の地域で顕著な差がある。

2023年度の日本の乗用車世帯保有率は約77.6%だが、東京都全体の乗用車世帯保有率は34.7%と、全国平均を大きく下回る。東京都23区内では、乗用車の世帯保有率は約20%から40%の間で推移しており、特に都心部では20%未満の区も存在する。

東京郊外の多摩地域を考えた。具体的な数値は不明だったが、一般的に多摩地域などの郊外部では、公共交通機関の利便性が都心部ほど高くないため、乗用車の保有率が23区内よりも高い傾向があると考えられる。

東京都心部は地下鉄やバスなどの公共交通機関が非常に発達しており、日常生活で車を必要としないケースが多い。ただし、車を考えた場合、都心部では駐車場の確保が難しい。費用も高額で、車の所有を控える傾向も考えられる。結果的に、都市部では徒歩や自転車で移動できる範囲が広く、車を持たなくても生活に不便を感じない人が多いのだろう。

まとめると、東京都内、特に23区内では自動車の世帯保有率が低く、地方や郊外部では高い傾向が見られるのだ。

世帯あたりの保有台数も深堀りしてみる。地域によって大きく異なるからだ。2023年3月末時点で、日本全体の世帯当たり自家用乗用車保有台数は1.025台だ。

同時点で、東京都の世帯当たり自家用乗用車保有台数は0.416台と、全国平均を大きく下回る。ちなみに、最も高い福井県では、1.698台だ。地方では、公共交通機関の網が都市部ほど密ではない。日常の移動手段として自動車への依存度が高いのだ。結果、1世帯あたりの自動車保有台数が高く、複数台所有している世帯も多く見られるのだ。

(嗜好性と実用性)
統計数字は、内側をみないとミスリードされる。東京都と地方では自動車の保有目的や車種選択に違いがあると考えた。具体的なデータは限られていたが、以下の点から、東京都内では自動車が嗜好品としての側面が強く、地方では生活必需品としての役割が大きいと考えた。

東京都内は、公共交通機関が非常に発達しているため、日常の移動は電車やバスで賄うことができる。車の所有は必ずしも必要ではない。趣味やレジャー、ステータスシンボルとして高級車やスポーツカーを所有するケースが多いと考えられる。地方は、公共交通機関の網が都市部ほど密ではない。通勤・通学、買い物、病院への通院など、日常生活の移動手段として自動車が不可欠だ。このため、燃費効率や維持費を重視した実用的な車種が選ばれる傾向があるのだ。

東京都内は、駐車場代が高額で、車の所有を控える要因にもなる。車を所有する場合、趣味や嗜好性を重視した高価格帯の車種が選ばれることが多いと推察する。地方は、駐車場代が比較的安価で、複数台の車を所有する世帯も珍しくない。実用性や経済性を重視し、維持費の低い軽自動車やコンパクトカーが選ばれる傾向がある。

東京都内、特に23区内の駐車場料金は、地方と比較して大幅に高い。びっくりする金額だ。月極駐車場と時間貸し駐車場(コインパーキング)の料金相場を整理した。

月極駐車場の料金相場で、東京23区特に都心3区の千代田区、中央区、港区は機械式で、月額約40,000円~60,000円、平置きで50,000円~120,000円と地方の賃貸を超える金額だ。副都心4区の渋谷区、新宿区、文京区、豊島区では、機械式の月額約35,000円~45,000円、平置きで40,000円~80,000円だ。東部7区(江東区、墨田区、台東区、荒川区、江戸川区、葛飾区、足立区)は、月額約20,000円~30,000円。西部9区(品川区、目黒区、大田区、世田谷区、杉並区、中野区、練馬区、板橋区、北区)は月額約25,000円~40,000円だ。東京都23区外の八王子市で月額約10,000円~20,000円、全国平均を見ると月額約8,288円だ。

参考までに、時間貸しを調べると、東京都23区内のコインパーキングの価格は都心部で、10分で500円の駐車場も存在する。東京都23区外および地方は、60分で200円程度の場所が多いだろう。

(支出の割合)
東京都内では公共交通機関の利用が主流で、交通費は主に定期券や乗車料金として家計支出に計上される。一方、地方では自家用車の保有が一般的で、ガソリン代や駐車場代などの自動車関連費用が家計支出の中で大きな割合を占める。これらの違いは、地域の交通インフラや生活様式の差異によるものと考えられる。

東京都内の交通費で、平均支出額は、東京都区部の2人以上の世帯における1か月の交通費は約20,000円だ。家計支出に占める割合で、東京都の勤労者世帯における「交通・通信」費は、1か月あたり34,458円だ。

地方の交通費で、平均支出額は、全国平均で、2人以上の世帯の1か月の交通費は約14,000円だ。 家計支出に占める割合で、地方は、自動車関連費用が家計支出に占める割合が高くなる傾向がある。例えば、熊本市では「自動車等関係費」が東京都よりも高いが、全体の交通費の割合は東京都よりも低い。

都市部と地方で公共交通機関の利用を比較した。東京都内では、定期券や交通機関への支出が主な交通費となる。地方では、自家用車の保有が一般的で、ガソリン代や駐車場代などの自動車関連費用が主な交通費となる。地方ではガソリン代、駐車場代、自動車保険料、メンテナンス費用など、多岐にわたる自動車関連費用が占めており、例えば、普通自動車の年間維持費は約48万円と試算されている。

当たり前だが、東京都内と地方では、移動にかかる費用が異なるのだ。東京都内では公共交通機関の利用が主流で、月々の交通費は約2万円とされてる。一方、地方では自家用車の維持費が主な交通費となり、年間約48万円、月額に換算すると約4万円だ。

可処分所得に関して、東京都は全世帯平均で全国3位と高い水準にある。しかし生活費(特に家賃や食費)が高いため、実際に自由に使えるお金は他の地域と比べて少ない可能性がある。 一方、地方では可処分所得は東京都より低いものの、生活費が比較的安いため、移動費用に占める割合が高くなる傾向があるのだ。

従い、可処分所得が同程度であれば、地方の方が移動にかかるコストの割合が高くなると考えられる。また、東京都内の可処分所得が高いとしても、生活費の高さを考慮すると、移動費用に割ける余裕は必ずしも大きくない可能性も考えられる。

(その他)
– 免許の返納率を見ると東京23区は、高齢者の免許返納率が全国平均の約2倍で、一方地方は返納率が低いのだ。免許返納をすることでの生活困難を示している。
– 若者の車離れについても都市部と地方でのギャップがある。18歳から29歳の運転免許保有率(22年)は全国平均で80%だ。1990年代は90%以上だったので、減少傾向は否めない。しかし、同じ数字でも東京都は60%で地方は以前90%以上が免許を取得している。

(まとめ)
日本において、地方は依然として車社会なのだ。一方で、公共交通機関での生活が可能な東京や大阪の一部都市圏では車社会ではなくなっている。若者の車離れも同様で、都市部のみの現象なのだ。更に、高齢者で地方は依然として車依存が高いのだ。



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