新規事業の旅106 スタートアップと採用

2024年4月24日 水曜日

早嶋です。

数名の企業が素晴らしいビジネスモデルを信じ事業を展開する。将来、100人、1000人の規模になるかもしれない企業のポテンシャルは、これから採用する人材で決まる確率も高い。一方、鶏と卵の関係で、今のキャッシュフローがネガティブな段階でポテンシャルだけ示されても、将来の従業員を引き付ける力は弱い。

スタートアップは、今金を払うことはできない。だからと言って低賃金で高給取り経験豊富な人材を獲得できる虫の良い話はない。当然、将来を拡張する可能性を持つ優秀な社員に対しては、相応のインセンティブが必要だ。そこにストックオプションが活用される。例え1%以下のストックオプションだとしても事業価値が1,000億になれば、その価値は数億にも相当する。

加えて、スタートアップの理念や、従業員が大企業で得られない体験ができたり、社会を変える挑戦に参画したりと、副次的な要素が集まれば、優秀な人材がやってくる可能性はある。お金ありきではないが、リスクしかないスタートアップには、やはり相応以上のリターンが大切だ。

そのために創業者や経営者は、事業の成長に対して、価値を作り出すことにコミットし、自分はいけると信じ続け行動する。この取組を10年単位で爆速できる胆力が絶対条件だと思う。そこに、今のメンバでなんとか問題を解決する感じではなく、適材適所で、適切なタイミングで、適切な人材を活用すること。そして規模を拡大して価値を創造する思想が大切だと思う。

数字や事業の中身も同様に大切だが、時期やフェーズに合わせた人材投入と組織構築は鍵だ。数名のメンバで1,000名規模の仕事をしたいのであれば、既に1000名規模でガンガン引っ張っている人材を登用する発想だ。今のメンバが頑張ったとて、現メンバの成長を期待しても、事業の成長はないし、人の成長は時間がかかる。既存の事業であれば、人材の成長を期待しながらでの登用は問題ないが、変化が激しい不確実な世界でその発想は、すなわち停滞を意味する。確実に人の成長は事業の成長より遅いのだ。

SaaSの仕組みを提供したいのであれば、既にSaaSの世界で活躍している人材を引っ張ってくるべきだ。法人営業を行うのであれば、法人の経験者を採用すべきだ。2Cの販促を拡張したいのであれば、試行錯誤するのも大切だが、その道のプロを責めてアドバイザーにつけるべきだ。起業メンバの学生とともに経験が浅いのに、プレゼンシートをちまちま作っても時間がいくらあっても足りない。あるべき姿を逆算したら、採用やメンバも、同様に逆算してメンツを決めていく。そのような発想は極めて大切だ。ベンチャーは現在の延長で議論しても無意味なのだ。※もちろん、一定のフェーズは自分たちで手や足を動かして汗をかくことは大切だ。ただPoCなどを終了して一気に展開するフェーズは思想を変えた方が良いのだ。

せっかく起業したのだ。常に自分が優秀である必要はない。自分よりも優れた仲間を集めマネジメントする。そのメンタルが大切だ。優秀な人材ではなく、使い勝手の良い、使いやすそうな人材を選んでも価値は創造できない。仮に問題を解決できても、将来に飛躍する起爆剤になra
る可能性は低い。

ベンチャーのトップの仕事は企業価値を高める取り組みだ。そのための戦略、そのための組織、それを達成するためのプロセス、そこに必要な資金。それらを示して投資家と議論しながら調達をし続ける。その取り組みができなければ、既に組織構築を経験した人材を採用して右腕につけるべきなのだ。

(過去の記事)
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