新規事業の旅93 アップルのゴーグル型端末

2024年1月9日 火曜日

早嶋です。

アップルが発表したゴーグル型の端末。価格は3,499ドル。金額を見ると高いと思おうかもしれないが、同社初のゴーグル型端末にかけた開発資金は数百億ドルとも言われる。過去の報道をみると1台あたりの製造原価は2,200から2,500ドル。仮にこれが正しければ、研究開発費の回収を度外視していることになる。

仮想空間技術の専門家でKKRのアドバイザーを務める米国ベンチャー投資家のマシュー・ボール氏の分析によると、

・アップルは18年頃より開発に着手
・以降米国で約1万2,300件の特許申請を行う
・上記の内、約5,000件はゴーグル型端末に関係する
・研究開発費は約400億ドル

とのこと。

当然、この技術はMACやアイフォンなど他の商品にも転用されるであろうが、実際に莫大な開発費をかけていることが分かる。

過去に、プリンターやコピー業界でも、莫大な開発費をかけ、初期は法人向けなど限定して高価格帯の市場に投入し、その後製造コストなどの削減や技術の改善を繰り返し、同様の機能を低価格で提供する戦略を取っている。結果、大衆市場においてもシェアを拡大し、結果的に開発コストも回収するのだ。

同様にスマフォやタブレットなどの電子製品も当初は高額でごく限られた市場向けにリリースした。そして同様のマカニズムで価格を下げ大衆を取り込む戦略を取っている。

近年では、テスラのEVも似たような価格戦略を取っている。はじめて上市したロードスターは約10万ドルを超える価格設定だったが、現在の主力車種のモデル3は約3万5,000ドルで販売している。モデル3の外観は別として、EVそのものの性能はロードスターよりも遥かにバージョンアップされている。

アップルのゴーグル型端末。機能も十分ではなく、価格も高い。が、市場に出すことで開発者の基盤をつくることもできるし、様々なデータを取得することができる。それらを更に現場の開発に応用して半導体や光学系の技術に投資を行い、最終的にはアイフォンのように大衆でも少し頑張れば手の届く価格設定を出してくれることに期待しよう。

(過去の記事)
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