早嶋です。
新規事業の作り方として、自社で全てを行うゼロイチがある。現社長がアントレプレナーで現役バリバリで新規ビジネスを創出しているのであれば、ゼロイチの成長は一定の可能性が見込める。
一方で、日本企業の多くはサラリーマン社長だ。実際に新規事業をゼロから立ち上げた経験よりも、誰かが立ち上げた事業を倍、10倍に伸ばす取り組みや、低迷した企業のテコ入れをして業績を取り戻すなどの課題解決が得意だ。
と考えると、多くの企業は新規事業のアプローチとしてゼロイチ以外のオプションも必要だ。その方向性は提携や出資だ。ゼロイチを創造したい分野で既にリードするベンチャーや何らかの技術やノウハウを持つ企業とタッグを組み、一緒に事業を加速する手法だ。
ベンチャー企業は、何らかのイノベーションや新しい切り口を活用して、急激な成長を目指す比較的若い企業だ。アイデアを事業化すべく日々取り組むが、多くの企業が運転資金の確保に苦しんでいる。
資金調達はDebt(借りて調達する方法)と、Equity(新株の割当と引き換えに資金を調達する方法)、そして補助金など国や自治体から調達する方法がある。ベンチャー企業の立場からDebtでの調達はリスクが有るため、Equityや補助金に頼るのケースが多い。
投資サイドから考えた場合、ベンチャー企業に闇雲に投資することはない。リスクを取れば高いリターンが得られる定石はあるが、皆がそのような投資をしない。その際に便利な考えに投資ラウンドの概念がある。
エンジェル、シード、アーリー、ミドル、レイターなどのステージに企業の成長ステージを分けて投資を検討するのだ。アーリー頃よりベンチャー企業は上場を意識する。そこでプレシリーズA、シリーズA、ミドルをプレシリーズB、シリーズB、レイターをシリーズC、上場をシリーズDと呼ぶこともある。
エンジェル投資は設立間もない企業に投資をするフェーズだ。事業会社の特注からするとこのフェーズの投資はありえない。リターンや事業シナジーが全く読めないからだ。そのため個人投資家や縁故による投資が多い。
シリーズラウンドは、スタートアップ企業が最初にベンチャーキャピタルなどの外部投資家から投資を得るフェーズだ。ほぼ無名だがプロトタイプが完成し、市場での評価を始める段階だ。このフェーズで事業会社が投資する場合、自社のリソースを活用し協力する、市場評価のテストがし易い資源を持ち合わせる、現時点での課題解決によって自分たちの事業シナジーが見込める場合などだ。この場合、ファイアンスリターンよりも事業リターンを共に分かち合う可能性がある。
シリーズAラウンドは、通常一定のユーザー顧客がいて、プロダクトの追加開発や販路拡大にEquityを使い資金調達をする。ベンチャーからすると、このラウンドは本格的な資金調達で重要な投資フェーズにもなる。また、この段階ではPMF(プロダクトマーケットフィット)を達成している状況だ。プロダクトが顧客の課題を解決できる適切な市場で受け入れられている状況を達成している状況だ。従い、ポテンシャルが高いベンチャーは多くのベンチャーキャピタル(VC)から既に幾重にもコンタクトがある状態だ。
出資や提携を視野に新規事業を開発したい企業が、いきなりこのフェーズの企業とネットワークを構築するのは難しい。そのためベンチャーキャピタルに出資して情報を集めながら徐々に自分たちの足で稼ぐやり方を研究する。通常は、新規事業を専任で取り組む部隊があり、そこの課長がセンスがあり足も動かせる状況にあっても、自社で直接コンタクトができるようになるまでに5年以上の歳月が必要だ。そこで、一定の資金がある企業は自社で同様の機能をもつCVCの検討や準備に取り掛かるのだ。
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