新規事業の旅58 サスティナブル経営

2023年7月21日 金曜日

早嶋です。

サステイナビリティ経営とは何だろうか? それは、長期的な視野を持って経済成果、社会と環境への貢献を目指す経営手法だ。大企業が行う取り組みと認識されるが、小規模チームがこの取り組みを活用することのメリットも大きい。

(サステイナビリティ経営とは)
企業が長期的な視野を持ち、経済的な利益に加えて、社会や環境の持続可能性を考慮し事業活動を行う。結果、持続可能な社会の実現に貢献することを目指す経営手法だ。

ポイントは、従来よりも、より長期的な視野を持ち、環境、社会、経済の3つの側面をバランス良く考慮する点だ。環境負荷の低減や社会貢献活動、持続可能な製品やサービスの開発を経営に取り入れ、社会と環境に貢献するのだ。

サステイナビリティ経営の取組は、社会的責任を果たすことよりも、将来的なビジネスチャンスや競争優位性を生み出す重要な経営戦略と解釈され、企業が実践することでブランド価値の向上など、多様なメリットを得ることができる。

(SDGsやESGとの違いは)
サステイナビリティ経営、SDGs、ESGは、いずれも企業が社会や環境に貢献することを目的とするが、それぞれ異なる側面をカバーする。

サステイナビリティ経営は、前述の通り長期的な視野を持って経済成果、社会と環境への貢献を目指す経営手法だ。

一方、SDGsは、国連が定めた持続可能な開発目標であり、貧困の撲滅、地球温暖化の防止、平和と正義の実現など、17の目標が設定されている。企業は、自社の事業活動を通じてSDGsの達成に貢献することが求められている。

ESGは、企業の環境、社会、ガバナンスの側面を評価する指標であり、企業が社会的責任を果たすことやリスク管理を行うための指標として用いられる。投資家は、企業のESG評価を参考に、企業価値を判断することがあるのだ。

整理すると、サステイナビリティ経営は企業が取り組むべき経営手法で、SDGsは国際的な持続可能な開発目標で、ESGは企業の環境、社会、ガバナンスの側面を評価する指標なのだ。企業規模が大きくなるほど、これらの指標を総合的に考慮し事業活動を進めることが求められているのだ。

(サステイナビリティ経営における、環境、社会、経済のポイント)
サステイナビリティ経営の実践では環境、社会、経済の3つの視点を総合的に考慮する。

企業は環境に対する影響を最小限に抑えることが求められる。CO2排出量や廃棄物の発生量などの削減、再生可能エネルギーの活用、バイオマス資源の利用、環境保護活動の推進などだ。

企業は社会的責任を果たすことが求められる。人権や労働基準の尊重、地域社会への貢献、消費者保護、サプライチェーンの透明性の確保などだ。

企業は持続可能な経済成長を追求することが求められる。社会的価値を創出し、イノベーションを促進し、顧客満足度の向上、リスク管理やコンプライアンスの確保などだ。

これら3つを総合的に考慮し、より長期の視野を持ち持続可能な事業活動を行うのだ。昨今このようなワードを上手く活用し「やっている感」を演出する企業も少なくない。しかし自社の取組を整理し、こまめに発信することで、競争力を高め、結果的に顧客や利害関係者からの信頼や支持を得ることにもつながる。

重要なことは表面的に言語化して発信することではなく、企業として実践することだ。サステイナビリティ経営の本質は、企業の社会的責任を果たすための実践そのものなのだ。

(サステイナビリティ経営と企業価値の関係)
ボストン・コンサルティング・グループの調査によると、企業間の諸条件を揃えた場合、サステイナビリティ経営を実践する企業は、実践しない企業よりも利益率が高くなる報告を随所で出している。

EY Japanの各種レポートを見ると同様の取組を行う企業の資本コストは他の企業よりも低く、市場からの評価が高まっていることが分かる。これらの議論は世界経済フォーラムなどでも度々議題にあがっていることから一定の評価はあるのだろう。

また、S&P Dow Jones Indicesなどのレポートでも、ESG指標を採用する投資ファンドは、採用しないファンドよりも高いリターンを示す傾向を示している。サステイナビリティ経営の取組は、企業価値の向上と投資家からの支持を得るために重要な要素であることが分かる

(小規模チームの取組の仕方)
サステイナビリティ経営の取組は、何も大企業に限った話ではない。小さな規模でも取り組むことで企業価値の向上に加えて、従業員のエンゲージメントの高まり、利害関係者への訴求と認知が高まるなどメリットが多数ある。取り組み方も大きく構えることなく次のようなステップで実現できる。

1)組織の目的やビジョンの確認
長期的な視点で、環境・社会・経済の3つの視点から取り組むため、組織の目的や現在のビジョンと照らし合わせて取組みを確認する。

2)利害関係者の整理
利害関係者は、従業員、顧客、取引業者、地域社会、金融機関などだ。各利害関係者にとって重要な課題や要望があれば共有しながら取組を進める。

3)現状分析
多くの企業は何らかの取組を既に実施しているはずだ。例えば、組織の社会貢献や環境貢献活動、省エネ活動などだ。このような活動をサステイナビリティ経営の取組として一度整理してみるのだ。

4)目標設定
上記の取組を繰り返し該当チームで取り組む目標を設定する。具体性、測定できる指標、実現できる内容、時間軸などを可視化し、適宜利害関係者と共有する。

5)行動計画への落とし込み
上記をベースに行動計画を策定する。小さな組織でも行っている行動が世の中に役立つことが分かれば皆の気持ちが高まっていく。そして定期的にその実行の確認とブラッシュアップを継続する。

6)コミュニケーションの実施
取組状況などを適宜、利害関係者に発信する。簡単なレポートを作り提供する。WebサイトやSNSで定期的に発信する。イベントや講演会の時に状況を伝える。日常的な顧客とのやり取りの中に挟んで話をする。など、取り組める内容を2、3組み合わせて実施するのだ。

(小規模チームが取り組む際の意識と留意点)
良いことばかり書いてみたが、最後にデメリットや留意点を整理してみる。

まずは、費用増加だ。環境や社会に配慮した取り組みを行う必要が一方、長期的には設備の改修や、認証取得など費用がかかることがある。また取り組む際の人員確保や従業員の教育にも費用がかかる。

サステイナビリティ経営を実践することで得られるメリットはあるが、それを社会にアピールすることを従来から行っていない組織は少し難しい部分もある。広報やマーケティングの活動もセットで捉えたほうが良いからだ。

仮に、業界全体でサステイナビリティ経営に取り組んでいない場合、小規模チームが取り組んでも、大きなインパクトを出すことは難しい。そのため業界内の他の企業とタッグを組む等、協力して進める必要もあるのだ。

サステイナビリティ経営は、より長期的な視野で経済、社会、環境に配慮した取り組みを行うことだ。持続可能な社会の実現に貢献することは、長い目で見れば自社の価値を上げ、地域社会と一緒になって永続することを目指すのが小規模チームの理想だと思う。

大上段に構えることなく、従来の取組を整理する形式で、経営者の考えを示し、従業員や地域社会のこと等をチームで考えるツールとして捉えることで、小規模チームでも活用ができる取組だと考える。

参考:「トータル・ソサイエタル・インパクト」 株式価値向上から社会的価値向上へ ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)

(過去の記事)
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