オペレーションからプロジェクトへ

2022年1月7日 金曜日

早嶋です。

2000年頃、はじめて社会人になり経営に関する言葉のシャワーを浴びていた頃、しきりにOperational Excellenceというワードが飛び交っていた。20世紀を通して組織の運営効率を如何に上げるかという取り組みだ。効率、生産性、改善。このようなキーワードを聞かない日はなかったくらい良く耳にした。

2007年頃より、世の中がスマート革命の洗礼を受け、モノとモノが互いにネットワークでつながり、世界中のどこにいても親指一本でコミュニケーションが可能になった。近年のコロナではテレワークのアレルギーも吹っ飛び、もっぱら大企業の専売特許だったDXが一般企業にも浸透しつつある。

最近大きな組織で聴かれるワードは、オペレーションからプロジェクトに変わった。日本語のニュアンスでは前者が組織運営だとすると、後者は組織変革になる。迅速に製品開発を行い、迅速に新技術を導入し、短期的に業績アップを目指し長期的な価値創造をするという一見すると無茶苦茶な取組だ。しかし、これは明らかに世界的なトレンドになっている。

2017年のプロジェクトマネジメント協会の推計によると、同年から向こう10年間に約8800万人がプロジェクトマネジメント関連の仕事に従事し、それによる経済効果が12兆ドルから20兆ドルに成長するという。推計後に世界的なパンデミックが起きているから、おそらくこの数字はもっと膨らむことだろう。

国内をベースに、今後の人事はジョブ型の人事を中心に遂行しようと聞こえてくるが、オペレーションベースの仕事に関しては綺麗に職務記述書を書くことができるだろうが、プロジェクトベースの仕事は頑張って記述できても役割くらいが関の山だ。従来のように決まった仕事が既にあり、時々プロジェクトが舞い込んでくるという世界は過去の産物になり、今後は全てがプロジェクトベースで、ひとしきり終わった仕事の一部はたまたまオペレーションベースの仕事になるのだ。そしてそのオペレーションベースの仕事はAIやコンピューターで十分に再現できる可能性が高い。もはや高給取りが必死になって取り組む手の仕事ではないのだ。

オペレーションとプロジェクト。ここで言葉の整理をしておく。オペレーションは組織運営を指し、旧来の事業の中核をなした活動だ。営業、顧客サービス、財務、会計、製造、インフラ管理といった機能になる。この場合の勘所は効率、生産、スピードだろう。時間軸は極めて短期的で常に業績を重視し、組織の運営形態は階層構造だ。従って、みんなは認めないが上意下達、トップダウンがお似合いの活動だった。

プロジェクトは何らかの成果物を創出する取組だ。通常は製品やサービスやイベント等だ。大規模な取組から小規模なものまで様々だが、必ず時間的な制約があり、資金、人材、時間の3セットの投資を伴い、一定の価値、何らかのインパクト、何らかのベネフィットを生み出すための取組だ。そして何よりもオペレーションと異なる要素は、過去に一度も行ったことが無い何かが常に組み込まれている点だ。

そのためプロジェクト管理は、プロジェクトの定義、計画、実行を行うことは勿論のこと、その目的や成果物を常に明らかにしておく必要がある。そうしなければ創出する何らかのベネフィットに対しての費用効果が測定できないからだ。プロジェクト管理において、従来のオペレーション管理の要領で行うと、管理者は計画、見積、費用、時間、リスク管理などにフォーカスするばかりで、最終的にはインプットとアウトプットしか見なくなる。が実際は、プロジェクトの目的、生み出す成果や価値、実施する根拠やインパクト、企業が取るべき戦略との整合性などを常にチェックすることが必要になる。

オペレーションと異なり、先に計画した通り全てを完工することなど不可能だ。そのため画一的なアプローチは実は存在しない。過去に誰も行ったことが無い取組であり、プロジェクト中に実験、失敗の吸収、そこからのフィードバックを繰り返す必要があるのだ。ありきたりだが、イノベーション、プロジェクトを理解したチーム、そしてベネフィットを生み出すという強い信念が必要とされる。

参考:アジャイル化するプロジェクトマネジメント HBR 2022年2月号



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