早嶋です。
(なぜ、リスキングやリカレント教育)
リカレント教育という言葉が紙面やニュースに出るようになり、最近はリスキングといワードも目にするようになりました。リカレント教育は、キャリアを中断して大学などに入り直して自分のスキルや能力を向上することを指しますが、リスキングは仕事を継続しながらスキルを継続的に高めていく概念を指しています。
近年、学び直しが話題になる社会的な背景はデジタルトランスフォーメーション(DX)の影響でしょう。2020年1月の世界経済フォーラム(WEF)では人工知能等の技術革新と普及による第4次産業革命への対応策として仕事をしながら能力をアップデートする重要性が提言されました。その追い風のように一連のcpvit-19。これまでテレワークなどに対して及び腰だった企業はその必要性に迫まれ、社内のIT脆弱性を再認識している昨今でしょう。
日本の教育は、早い人はお受験が幼稚園からはじまりますが、多くは親心で、良い幼稚園に行けばストレートで大学までと、微妙な勘違いがきっかけになっています。そして中学校や高校の受験が続き、メインディッシュは大学受験です。そのためか大学になった当人は、何らかのプレッシャーから開放されて、自ら進んで学習することを忘れ、一番需要な時期に骨抜き状態になり遊び呆ける始末。そして就活という踊らされた言葉にのっかり、就職することをゴールにこれまた必死に活動を続けます。
そして社会に出ると、日本企業の多くは新入社員教育から入社3年目、5年目教育などと企業が力を入れているOFF-JTと現場で実務をこなしながら仕事の内容を覚えていくOJTを習熟に、本来最も大切な自分から将来のキャリアをイメージして学ぶ自己啓発がほとんどなされなくなります。なんのためにじっとこらえて受験勉強を続けているのでしょうね。
日本は国内総生産(GDP)に対する企業の人材育成投資の比率が主要国では最低です。入社時が浅いときは社員教育に熱心なのですが、肝心なキャリアを積む過程での教育制度は大手企業でも微妙と言わざるを得ない状況です。それも、日本企業の多くが伝統的に入社して、その人の能力を見極めた後に、役割を与えるという仕組みが背景にあると思います。欧米では、先に仕事や役割が有るため、その基準があれば年齢関係なく仕事とポストを与えられます。そのため必然的にその役割に就くために自分から積極的に啓発するしかないのです。
高度成長期のように、一つの技術を習得して10年単位で食える時代は良かったのでしょうが、今のように、技術のサイクルが目まぐるしく変化するときは、ベテランこそ常に技術をアップデートし続ける必要があるのです。そこにDXの波というのがリカレント教育やリスキングなどの教育関連の言葉が闊歩して言る背景にあるのでしょうね。
(各国の状況)
主用な大手企業は国内外を問わずリスキングに投資しています。covit-19があけて次の時代が来るタイミングで特にデジタル関連の人材を大量に保有したいと考えているのです。日本経済新聞社の試算では一連の経済の押し上げ効果を700兆円と期待しています。
逆を言えば、DXがシフトした世の中のことを考えた場合、今の仕事がなくなっている可能性は皆に一様になるのだから、給与をもらって仕事をしている殆どの人がリスキングの必要性があることの証左です。先のWEFは2025年までにデジタル加速で事務職等の職種、約8500万人分の雇用が失われる代わりに、AI専門家等の職種に約9700万人の雇用が生まれると予測するのです。となると急激に、新たな人手が生まれるわけではないので、おおくの場合今の人がバージョンアップせざるを得ないのでしょうね。
一応、現時点のところでは主要国は次のような策を打ち出しています。英国、成人に対して無償で職業訓練を開始し25億ポンドを拠出する。米国、製造や環境関連分野において労働力開発に1,000億ドル投じる計画あり。韓国、スタートアップと連携し若年層のデジタル教育過程を開発。デンマーク、職業訓練受講者の失業給付の引き上げ。
その中でシンガポールは各国のモデルになっていると言われます。従来から外国人労働者の受け入れを拡大する同国は、失業者が増えるなどの国民の不満は強かったと思います。2010年頃、新たなスキルを学んでもらう生産性を向上する政策を導入。2万5千もの訓練コースや25歳以上の全国民に4万円程度の訓練費を支給する制度を行っています。関連する政策には国内主用企業や大学が関与して、2020年には40代から60歳に支給する訓練費を増額しています。このように国家的に国民一人あたりの生産性を向上する取組を進めているのです。
そして、日本。公共職業訓練の受講者を増員とあるだけで、具体的な動きは見えません。大手企業がリカレント教育やリスキングに関して動きはあるものの、毎年言葉を変えてIT人材を●千人増やします!と言っているだけで実質的な効果は出せていない状況です。
公共で見ると、上述している通り、公的支援のGDP比率は主要国の中で最低です。17年比較では0.01%で米国の3割、独の6%程度の数値で極めて低い水準です。国は、コロナ対策で観察した通り、休業手当を補助する雇用調整助成金に4兆円を投じていますが、それを受ける条件として一定のDX関連の教育を半年受けることなどの将来を見据えて策はほぼありません。常に雇用政策の力点は過去を見ており失業にフォーカスしているのです。