早嶋です。
God is in the details. 神は細部に宿るという言葉、ミース・ファン・デル・ローエ、ドイツ出身の建築家が残した言葉だと言われています。ただアインシュタインやル・コルビジェ、ニーチェ等も同様の表現を残しているので、大成した人の多くが大切にしている概念だと思います。
全体や見た目ばかりを気にしても、本当に大切なことで手を抜いてしまえば、そこからほころびが始まる。結果として全体の完成度が落ちてしまう。そんな解釈でしょう。
先日、10年ぶりに福岡で写真展を開いた山内悠さんの作品を観に行く機会がありました。そして今回も10年ぶりではありましたが、じっくりと妻と一緒に話する機会がありました。今回のテーマは惑星。同じ星の中に住む住人、住む世界が異なれば、異なる思考を持つ。そんな意味を込めた写真展では、モンゴルの様々な民族と自然、そして自然にもうすぐ自然になる構造物が作品に閉じ込められていました。
作品の説明を受けている中、何度がパラレルワールドというワードが出てきます。モンゴルで見る空と日本で見る空。同じ空を見ていても、見る人によっての解釈があり、そこには別の世界があるのではないか。同じ写真を撮っても、昨日撮った写真と今日撮った写真では、本人であれ考えた内容がことなり別の世界が存在するのではないか。同じ写真を見て、解釈する人によって内容がことなる。それはそれで別の世界が生まれる。
2014年から毎年モンゴルに行き、写真を撮り続ける中で山内さんが考えたことが文字ではなく絵として切り抜かれた世界。偶然に撮ったのか、その一枚を追い求めてとり続けたのか。しかし展示されている作品はどれも物語があり、1つの質問で話が尽きない。やっぱり魂がこもっているのでしょう。
購入した写真集の裏表紙には右と左のページに真っ暗な夜空に光の加減で星を切り取った作品があります。どちらも同じ写真。でもよく見ると、右のページの写真には流れ星が表現されています。同じ世界でも見る人が異なれば、見る人の思考が異なれば世界が少しづつ変わってくる。そして世界はそうやって、幾重にも人の数だけ世界があるのではないか。そのような概念を作品のまとめにびしっと仕上げている。あー、やっぱり細部にも本質があるのだなと感じました。