原です。
大手資本を中心に垂直的に組織されてきた下請関係は、グローバル化による企業の海外進出などにより揺らいでいます。
このような中、地域内では、優れた技術やノウハウをもちながらも取引先を失った下請け企業が多数残されることになります。地場産業の再構築を図るためには、これらの経営資源を活かし、新たなネットワークを結び直すことが必要となります。
地域の企業が相互にネットワークを組み、下請け関係ではなく「横受け関係」を創り出せば、相互取引の中で仕事と資金が回り雇用や税収効果も高まることになります。
この税収の増加を自治体が地域内に追加的に再投資すれば、地場企業の地域内経済力はさらに高まっていくことになります。
ここで、地域内経済力が高まる考え方の小さな取組事例を紹介します。
私は、都市と里山での2拠点暮らしにより原農園を兼業しています。
多くの知人からは、「原さん、原農園の農産物をお客さんに直接販売しないのですか?原農園の顧客コミュニティを作れば?」などのご意見を頂きます。当然、私も考えたことがあるアイデアです。
しかし、「私がお客様を囲い込むのは、お客様と原農園が喜ぶだけだな。微力ながらも地域経済にも貢献できないだろうか。地場企業にも貢献できないだろうか。どうせなら、お客様・地場企業さん・地域生産者(原農園含む)の三者にメリットがあると良いな。」と考えました。
だから、独自でお客様を囲い込み直販するのではなく、地場の農産加工会社と連携し、顧客調査、開発・加工・販売・アフターフォローに取り組む横受け関係を重視していくことを意思決定しました。
こうすれば、横受け関係の強みを活かし付加価値を高めることで遠方など多くのお客様にも喜んで頂ける。地元の農産加工会社も喜んで頂ける。私も人と自然に優しい農産物の栽培に集中でき健康で心豊な2拠点暮らしが継続できる。地域生産者や兼業農家が増えることで持続可能な地域社会の維持にもつながると考え、原農園の生産物は自給自足分以外は地場企業との横受け関係にしていく計画を立てました。そして、数年前から週末の兼業農家でも持続可能な70アール(約7,000㎡)の災害にも強い農園再開発に取り組み、2021年春には再開発を完了させることができています。
また、地場企業の商品は、地場市場の上に生まれ育つものです。
地域生産者の再投資が可能となるように、地場の加工業やサービス業が比較的高価格で買い取る仕組みが地域内産業関連を作る取り組みとなります。
私は長年、地域産品のブランド化にも取り組んできましたが、お客様や地場企業との信頼関係を築いた地域産品は、一時的な流行ではなく長期的かつ安定的に適正価格で購入して頂けるとても強い商品となることを体験しています。
さらに、マーケティングを都会で経験し、地域の食品加工会社や食品流通会社で働きたいという若者も増えています。この若者たちに事業承継の機会を増やし、失敗を恐れずに新しいビジネスを再創造していく人財育成も地域には必要です。
つまり、横受け関係のある地域内経済力とは、単独で全てを囲い込もうとせず、人と人との関係を意識的に創り出す地域形成の基本的な考え方なのです。