マーケティングを考える②

2020年2月21日 金曜日

早嶋です。

日本人は自分の考えを整理して第三者に話をすることが苦手だといわれます。一方で米国人は話すぎると。他方から見れば欠点で一方から見れば利点になります。自分の状況を整理してありたい姿を規定する。そしてそこに向かうためのペインを明らかにして、打破するための策を考えて行動する。行動する前に何らかの策があるから、行動した結果、実際に有っているかいなかを確認することが可能になる。そしてブラッシュアップして、その学びを次に活かしていく。

このような術を身に着けていけば、たとえそれが他人の経験や行動で有ったとしても自分ごととして捉えて自分の思考を都度整理したり視点を変えて擬似的に考えることができます。他人の体験を疑似体験として自分のものにできるのです。マーケティングは本から学ぶと思っていましたが、実際に上記のような思考や考え方に陥れば、実は身近なものから、日常的に学び続けることができる分野だと気づくのです。

デジタル化が浸透しても、我々は1日に3,000から5,000ものメッセージを企業側から受けているといわれます。皆企業のマーケティング担当者が議論して考えただろうメッセージです。どのようにターゲットユーザーに届かせ、どのように認知を得て、どうやって購買の動機を誘い出すか。あるいは、購入者に対して、あなたの購買は正しかったという購買後の満足を引き出すか。等など。世の中はコミュニケーションにあふれていますが、それを意図的になんでそのようなことをするんだろうか?と問いかけ自分で考えるだけでマーケティングを学ぶことが出来てきます。

マーケティングは仕組みつくりです。その魅力は応用範囲が広いことでしょう。日常でも活用できるし、もちろん企業の戦略部門でも企画部門でも、スタッフ部門などでも、コストセンターである経理や製造だって同様に活用できる学問です。企業の価値を考え、商品の価値や立場を整理する。顧客の集合体である市場を創造して、いかに彼ら彼女らにハッピーになってもらうかを考える。市場を調査して、気が付かなかった気づきを言語化していく。顧客は何を考えているのだろうって。何を欲しているのだろうって。そもそも価値ってなんだろうって。

色々ものを買っていくと機能の違いよりも作りての想いが気になってくる。アップルのパソコンはスペックは確かに高いけれども、値段以上の機能スペックはあるとは思えない。でも買ってしまう。それってなんだろうって。しかしアップルの商品を沢山買う人は、その人から勝手にアップルの情報を引き出してかってに自らアップルのことを知るようになる。価値を提供するだけでなく、その価値を購入した人や興味のある人に届ける工夫もしなければならない。

顧客と言っても人口の数だけウォンツがある。しかも顧客の殆どが実際の自分の欲求を正しく言語化できていない。インタビューしたとてわからないし、実際に聞き出した内容は、あなたがインタビューしたからその場で思いついたのよ。というのが正しいかもしれない。だからと言って毎回、その人オリジナルの商品を提供していたら価格は恐ろしい値段になってしまう。

そこで市場を細分化する方法が考えられました。その人は何がほしいのか?なぜ買うのか?そのようなことを考える人はどんな特徴があるのだろう。似たような人を集めることができて、そのような人にリーチすると商売がしやすくなるし、その人達のウォンツを叶えることがでいるのではないか。双方に取ってハッピーだぞ。

マーケターはそれを実現するために、試行錯誤して、最終的にシンプルな言葉に整理していく。これは以前のブログでプロパガンダの手法でもあるのだけど、シンプルに、わかりやすいメッセージを繰り返すことで、その層の人達の記憶に残りやすい状態を作ることができやすくなります。

マーケティングに世界ではUSPと表現します。独自の売りのポイント。市場を分ける際に、分ける切り口が無ければ、独自のユニークなドメインを開発するのも一つの手です。エナジードリンクのレッドブルは日本での普及に栄養ドリンクでは歯が立たないことを理解して、独自ドメインであるエナジードリンクを創造しました。顧客の隠れた欲求を言葉にして、そこを結びつけて上げるのが上手なマーケターです。

マーケティングで市場の研究を徹底するのは、独自のドメインを開発することがゴールです。セグメンテーションでは市場を定義して、ターゲティングで狙うべき層を研究する。そしてポジショニングで独自のドメインを抽出、あるいは創造するのです。サントリーの黒烏龍茶は食べても食べた分くらいは太らない。という独自ドメインを獲得することに成功しています。健康食品の分野なのに食べても良いよ。という絶妙なポジションです。

STP戦略はいろいろなやり方があるけれども、それを独自に自分なりにアレンジして考えるのも楽しいものです。伝統的なデモグラフィック指標以外にも今はデジタル化の並で行動データに関連するデータを駆使してセグメントの切り口を自由にみつけることもできます。行動データだけでは見えない消費者の心理データを探るために実際の行動観察やインタビューを重視するマーケターもいます。どれが正解かは目的によって異なると思いますが、切り口がたくさんあって、メリットとデメリットが沢山ある。それらを自分なりに整理出来て使い分けることが実に楽しい学問です。

しかし、はじめから決めつけでターゲットを決定すると自分の思いつきから外れることは無いので、市場が無いか、有っても小さすぎの場合が多いです。ニッチで攻める場合は別として、通常の企業がマーケティングするには小さすぎることが一般です。論理思考ではモレなくダブりなく考えるでしょうが、STP戦略の考え方も同様です。最初から絞らない。自分の仮説をもちつつも、市場の研究ではできる限り視野を広げていく。そして分析と直感を行き来しながら絶妙な独自ドメインを創り出すのです。

そのためにセグメンテーションの切り口や変数を様々に変えるということをします。そのために、マーケターはいろいろな切り口を持ったほうが良いから、同業だけではなく他者や他業界、場合によって全く関係ない正解の事例や切り口を持ち出して融合して市場を創造していくのです。

ここには完全に自由な発想があり、遊びココロがある。しかし、一定のゴールや戦略の定義はしっかりと忘れないで、制約条件を見た上で思考を張り巡らせていく。実に高度でワクワクする遊び、いや仕事なのです。



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