創業71年 変えるモノと変えないモノ

2019年9月29日 日曜日

高橋です

毎月この1か月間にお会いした人、会社の中から、私が選ぶ The most impressive Meeting(最も印象に残る出会い)を皆様にご紹介してまいります。

今月のテーマは「創業71年 変えるモノと変えないモノ」です。

ご紹介するのは伝統工芸「久留米絣(くるめがすり)」を製造販売する下川織物さんです。私共が提供する異業種交流研修「武者修行研修」のフィールドワークにて工場見学し、絣の製造工程を拝見しました。下川さんから会社の現状や課題、今後の展望など質疑応答を交え1.5日間、熱い議論を交わしました。総勢27人の大人の社会見学です。

まずは下川織物さんについてご案内します。昭和23年(1948年)創業、福岡県八女市で括り(くくり)技法という伝統技法で多彩な柄を表現する織物を作り続けています。その確かな技術は第6回ものづくり日本大賞経済産業大臣賞を授賞したことからもわかります。
下川さんは3代目、ご自身も職人として工場に立つかたわら、経営者として新しいビジネスモデルに取り組み、久留米絣の伝統(ローカル)を保存継承しつつ、さらにグローバルに海外展開する「グローカルコミュニケーター」という独自のスタイルを確立されています。

工場に近づくにつれガッチャンガッチャンガッチャンガッチャンと大きな音が響いてきます。中に入るとけたたましい音とともに、オイルとほこりの混ざったニオイが懐かしさを感じさせます。映画やテレビで見たことのある、いかにも年代物だと解かる歯車やベルトが回り、縦糸を前後にガッチャンガッチャンしながら、横糸が左右にビュンビュン往復し、織り込まれた絣が出来上がっていく様子は大迫力です。この機械は100年前に開発された紡織機でいまだに現役で活躍しています。(トヨタの技術者も見学に来たそうです、会社のルーツですから)職人さんが時折機械を止め、糸を入れ替え、また動き出す、赤色や藍色の糸が織り込まれていくと色が深く濃く、そして柄が浮き上がり絣になっていく様がとても美しく感じられました。

さて、テーマの「変えるモノ」「変えないモノ」とは何か。
「変えないモノ」はズバリこの機械です。下川さんは機械も製造工程も決して変えません。ここを変えるともはや久留米絣ではない物になってしまうのです。よって職人さんたちにもそこに変化を求めません、昔ながらの技を忠実に守り次世代に継承してくれることを求めます。つまり生産量を増やしたり効率化するという選択をしませんでした。

一方「変えるモノ」はビジネスモデルです。SNSと伝統工芸で新しい集客の仕組みを確立しました。
以前は問屋に卸していたのですが価格の条件が厳しく、利益率が低かった。しかし、伝統技法を守るため生産量を増やすのではなく利益率を高める必要があり自社で販売する戦略にシフトしました。
その戦略がSNSによる情報発信と工場見学でした。下川さんはブログ、Facebook、Instagram、YouTube、Twitter、Tumblrと6つのツールを使って職人目線で情報発信し続けています。そして興味を持った人が実際に工場見学に訪れます。日本中はもとより、海外からも見学に訪れます。国内外デザイナー、企業、自治体、学校、もちろん繊維業界。そしてメディアの取材もテレビ、ネット、雑誌、新聞、数知れず。そこから工場での直販やネット販売、小売業とのアライアンスへ発展しました。
影響は広がりフィンランド、スウェーデン、オランダ、パリ、ニューヨークでイベントやプロジェクトに招かれ日本の文化を発信しています。

また職人さんの働き方も変えました。職人と言っても近所の奥さんとか知り合いの知り合いとか口コミや工場見学を通じて集まった人たちです。子供がまだ小さいお母さんは子供が学校から帰ってくる14時までだったり、1時間単位で出勤できるようそれぞれのライフスタイルに合わせた働き方ができます。

そして起業家支援をすること。絣に興味を持った若い人や商売を始めたい起業家を支援することにより、スモールビジネス同士のつながりから絣の新しい可能性を一緒に広げたいと考えています。近くに絣で作った洋服やランチマット、テーブルクロスを製造販売するお店もでき全国から注文が届いています。

下川織物さんは100年企業を目指しています。この伝統を継承し次世代につなげ、さらに海外に久留米絣を広め、たくさんの人がかかわるコミュニケーションが生まれることを期待しています。
職人として「変えないモノ」と経営者として「変えるモノ」、大切にしたいモノを守りつつ時代の変化を柔軟に取り入れる下川さんのチャレンジから多くの学びと刺激をいただきました。この後、われわれの研修プログラムではさらなるイノベーションを起こすビジネスモデルを下川さんに提案する予定です、乞うご期待!

『生き残るのは、最も強い種ではない。最も賢い種でもない。環境の変化に最も敏感に対応できる種である(チャールズ・ダーウィン)』

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