投資判断その2

2007年6月24日 日曜日

早嶋です。

前回に引き続き、投資判断の話です。多くの企業では、投資判断の指標として、回収期間法を利用しています。こちらは、投資した資金が何年で返ってくるかを計算する方法です。

例えば、次のようなプロジェクトがあったとします。初期投資が500万円のプロジェクトで、1年目、2年目、3年目、4年目、5年目のキャッシュフロー(CF)がそれぞれ、100万円、200万円、300万円、400万円、500万円と予測されるとします。

この場合、2年目までに累積300万円を回収し、3年目で残りの200万円が回収できれば初期投資を全額回収できたことになります。3年目のキャッシュフローが年間を通して均等に回収されると考えると、残りの200万円を回収するのに、0.66年(200÷300)かかります。つまり、500万円全額を回収するのに2.66年必要となります。

投資判断の基準で回収期間が3年だったとしたら、こちらのプロジェクトは実行すると言う判断になります。

回収期間法は、このように分かりやすいということから、多くの企業で今でも使われているのではないでしょうか?しかし、こちらの回収期間法には、大きな問題が4つあります。

1)お金の時間価値を無視している
これは、1年目のお金と2年目のお金を同等に考えているという問題があります。現在価値でもコメントしましたが、時間価値を導入して判断するべきです。

2)回収期間後のキャッシュフローを無視している
上記の例で、回収期間は2.66年となりました。もし、回収期間が2.5年以内であれば、こちらのプロジェクトは無視されることになります。しかし、こちらのプロジェクトは、4年目、400万円のCF、5年目で500万円のCFとCFの増加があらかじめ予測されています。このようなプロジェクトを本当に実施しないのか?と言う疑問が生じるでしょう。

3)プロジェクトのリスクを無視
前回示したNPV法などは、将来発生するCFを割引率で調整する事によってプロジェクトのリスク(将来のCFの不確実性)を反映しています。しかし、回収期間法では、リスクを反映する事ができません。

4)回収期間の基準のあいまいさ
4つ目の問題は、基準そのものの曖昧さです。先の例でも、回収期間を3年とするという根拠は何処にあるでしょうか?

このように、回収期間法は非常に分かりやすい反面、問題点もあります。そこで、通常の事業活動の中で将来をも左右する投資判断の基準としては、上記の問題を十分理解した上で参考程度に利用する事をお勧めします。

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