早嶋です。
企業の多くは3年程度の中期経営計画を立案して複数の事業を運営マネジメントしている。しかし、実際にその事業計画を徹底的に現場レベルに落とし込み、毎年ローリングしながら計画を修正加筆して使い倒している企業は少ない。むしろ計画を立てる作業には超気合を入れるのだが、その計画を実行して検証しながら修正し場合によっては大きな変更を行う企業は少ない。
* 計画を立ててこれまで通りの動き
* 計画はあるが詳細な分析などは無くファクトが不足
* 事業部ごとの足し算で全体の帳尻を合わせるだけの計画
* 経営層で計画を作るも課長以下実際の現場レベルには何の説明も行わない
計画を立ててこれまで通りの動き
まさかと思うが、ひどいところは計画をたてるのに精一杯でどうやって実現するのか?などの議論も行わずに、作った計画は大切に棚にしまって、例年通りの行動を取っている。そんな企業は無い。と思いたいが、案外と少なくはない。ひどい企業になると、計画を作るのが思ったよりも大変だから、実際と異なる動きや環境変化が起こったにもかかわらず修正をしない。大変だからという理由で。そう、計画を作ることが目的になった証拠だ。
計画はあるが詳細な分析などは無くファクトが不足
どうして、そのような方針を立てたのかについて、基本的なマクロ分析、顧客や市場分析、競合や代替の分析、自社の分析などが無く、それっぽいが主観で書かれている。当然、そのような企業は大枠の目標はあるが、それを事業部毎、商品毎、或いは地域ごとなどに分解して目標を設定することなどしていない。また、3年分の数字が並んでいるが、初年度も3年度も数字の粗さは同じ。従って、初年度は1ヶ月毎の数字に落とされることも無く、当然、それを実行するための具体的な行動は示されていない。
事業部ごとの足し算で全体の帳尻を合わせるだけの計画
計画を作る際に、詳細に分析して作成しているものの、事業部間で議論して、企業戦略を前提に作られていない。どちらかといえば、それぞれの事業部が緻密に作った計画を管理部で合算して企業戦略としている。本来は、企業戦略としての方針があり、各事業のライフサイクルや立ち位置に応じてポートフォリオを議論して投資レベルを握っていく。それに準じてヒト、モノ、カネ、時間、情報の経営資源をあてがって事業部に指示を出す。従って、成熟期でシェアが小さい事業や成長期であってもキャッシュの配分が十分ではない事業などの資源配分があべこべになっていて事業が加速しないのだ。
経営層で計画を作るも課長以下実際の現場レベルには何の説明も行わない
折角緻密に、かつ綿密に事業計画を作っているものの、冊子にして渡して終わり。課長以下、資料を読むも、そもそも戦略的なバックグラウンドや知識が無いから読み解くことが出来ない。現場レベルになると資料は棚の上か引き出しの中に大切にしまれ印刷代も回収できない状態になってしまっている。そのような企業は、現場の社員レベルに全く浸透していないので戦略の方向性を無視した営業活動や研究活動が普通に行われている。
ミッションやビジョンを基に、まず企業としての在りたい姿を議論する。そして、それらを実行するために現状の事業ポートフォリオを確認して、資本の配分を企業全体の最適を見て決定する。当然、投資の配分にもメリハリがあり、閉鎖する事業の意思決定も定期的に行われる。事業部はその方針を受けて、全体最適になるように事業の戦略を練り、それを事業計画に落とし込む。3年、2年は大枠の数字と年レベルの動き。しかしきちんと分析された結果に基づく。基本的なマクロ分析と3C分析は整理されている。そして1年間は毎月の通過目標と行動目標が示され4半期ごとの目標と1ヶ月毎の行動が明確に示されている。
計画には、通過点ごとに評価する基準があり、基準をあるレベル以下で継続して通過出来ない場合は撤退を含めた検討やルールが行われる。また、計画作成3ヶ月毎に、直近1年間の目標、通過目標、行動目標が見直され、常に1年間の行動はローリングしながら管理している。つまりいつの時点でも向こう1年間の数字と直近12ヶ月の行動がブラッシュアップされている。当然、それに合わせて向こう3年は常に修正される。
事業環境が大きく変われば、中期経営計画で示された期間を無視してゼロベースで計画を見直すこともルールとして運用する。この取組は経営層だけではなく、事業部長、部長が責任を持って課長、そしてその下のクラスにまで自分たちの言葉で語れるレベルまで噛み砕いて共有している。
何も難しいことは無い。事業計画を作成する能力があれば、後はそれを運用することに力点を置き、計画にこだわらない柔軟性も取り入れるだけなのだ。と言いつつ、当たり前のことが出来ない企業は多い。