早嶋です。
世の中に±0というものがあるとします。可でも不可でもない状態です。問題解決において、いま±0の状態よりも悪い状態になっていたら現在問題と言って、その場合は現状や原因を徹底して議論して±0の状態に向かいます。一方で、±0よりも良い状態で更に上を目指す場合、どのようになりたいかという将来の姿を具体的に議論して、現在とのギャップを埋めることを考えます。この場合、将来問題と言います。
現在問題と将来問題。今置かれている状況に応じて、アプローチが異なります。
マーケティングに当てはめて考えてみます。今、±0よりも下の状態あるとき、人は充足したいと思いますので±0を目指します。ここをニーズと称します。ニーズの特徴は実際は現状でも良いのだけれども、何かしらの外圧によって良くしなければならないと感じている状態です。一方、その対極はウォンツです。既に満たされている状態から更に高い状態に向かいたいという欲求です。こちらの場合は、どちらかといえば自分からどんどん積極的に目指したい気持ちが強いです。
政府が法規制等でこれまでのルールを変更したとします。例えば省エネの法案が改案され、何かの基準値がこれまでよりも厳しくなったとします。企業は、法規制がなければ積極的に数値を高めるインセンティブは湧きにくいです。社会的に何か特別に取り組んでいる企業は別として、できれば最低限のコストで商品を開発製造したいと考えるからです。しかし、政府の言うことに逆らえば、その地域や国での経済活動を中止することを意味します。この場合、その企業が規制に対応する欲求はニーズとしての取り組みになります。
ニーズの特徴は、最低限の状態になることが前提で、それ以上でもそれ以下でも不要です。ピシャリ±0になれば良いのです。しかも積極的にそれを進めたいわけではないから規制に対しての取り組みは通常最低限のコストで行いたいと考えます。
ここまでは当たり前の話ですよね。しかし、いざこのような企業に何らかの解決策を提供しようとすると、その企業は常にもっと良いもの、最高の品質、最高の付加価値をつけて提案しよう!となります。結果、その分だけ価格やコストが高くなり、提供されれ側からするとただただ高い!となるのです。
この構図、日本の伝統的なメーカーでよく観察されます。戦略立案する際に、マクロの分析を行います。PEST分析などのフレームを使うと、政治的な要因や法規制により、今後のビジネスチャンスを見出すことが多々あります。それに向けて企業は自社の強みを最大限活用してソリューション提案をするのです。が、この場合、ニーズ的な欲求だということを意識していません。思いっきり±0を超える提案をするのです。提供する側が冷静になれば、顧客が求めているのはニーズだということは周知の事実。したがって、相手のゴールのちょっと上くらい、つまり±0よりも若干プラス程度の提案をすることがベストです。すると価格も高くなりにくいため、値段が高いのよ、提案はいいけどね。という20年以上繰り返される返答もなくなると言うものです。
ニーズ的な商品提案が多い法人企業の営業は、近年、伝統的なメーカーのシェアが奪われ、小さい規模の専業メーカーが勝っています。その理屈も上記と同じようなことです。専業メーカーは、法人企業のバリューチェーンにべったり張り付います。従って、どの程度のスペックレベルまでは最低必要で、それ以上は不要であることを見抜いています。そこであえて廉価な機能で提案して、相手がリーゾナブルと思う価格を提示しているのです。
これに対して伝統的なメーカーは、あそこは技術力が低くて値段が安いと一蹴します。しかし、実際コンペになると価格で負けたと言い訳をするのです。しかしこのような寸劇は2000年当時、私がメーカーに勤めていた当時から繰り返し起こっていました。それでも学習しない伝統的なメーカーは、本当にあるいみすごいのです。
※ニーズやウォンツに関する他の生地はこちら
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