早嶋です。
DMUとはDecision Making Uniteの略称で意思決定主体と訳されます。通常、顧客と捉えても、買う人、決める人、使う人に分けることができます。また、これらの行動に対して重要な情報提供をする主体もいます。情報を出す人です。
例えば、缶ジュースなどを自動販売機で買う場合を考えてみましょう。喉がかわいた人が自動販売機の前に行きます。そして、自動販売機のメニューの中から好みのドリンクを選びます。そして、そのまで蓋を開けて飲み干します。この場合、決める人=買う人=使う人になります。情報を出す人は、その人に対しての影響力が強い人ですが、広告やCMなどのマス媒体から商品のパッケージまで特定することは難しいでしょう。
例えば、ベビーカーを買う場合を考えてみましょう。夫婦で色々なベビーカーの検討をした末、ベビーカー売り場に行きます。そして、ベビーカーを買います。多くの場合、決める人はお母さんでしょう。そして、買う人はお父さん。実際に使う人はお腹の中の赤ちゃん。この場合。決める人≠買う人≠使う人になります。また、ベビーカーの選定に対してはお母さんのお友達や子育て中のお母さんなどの評判や口コミが決め手になる場合が多いです。従って、情報を出す人はママ友となるでしょう。
このようにDMUの切り口で顧客を分けることで、誰に対してどのような情報を提供すると良いのか?それぞれのDMUが欲する情報や購買の決め手となる要素は何か?を検討することができます。顧客と大きく捉えるよりも、上記のように分けて考えることで自社のマーケティング活動に活用できると思います。
地方の葬儀屋さんで、上記をベースに将来の需要を掘り起こしている企業があります。葬儀の場合、大きく2つの需要があります。本人が急になくなり、その家族が葬儀の準備をする場合。本人が生前から準備を進め、自分の意思を反映させた葬儀を行う場合です。前者の場合の決める人は故人の家族です。葬儀屋さんを決定する要因も、前者の場合はコントロールすることが難しく、たまたまその家族関係者とつながりがある葬儀屋さんに決まるか、地元の葬儀屋さんと提携している病院等の紹介などと、情報を出す人と葬儀屋さんの関係性がとても重要です。
一方、故人が生前から自分の葬儀の在り方を保持している場合、故人の意思が強く反映されます。そこで、その地方の葬儀屋さんは、大手が地元の病院や関係者と密な関係構築を行なっている時から、高齢者の方々を中心にワークショップを実施しています。その名も友引の会。毎月友引の日に集まって頂き、葬式の話や様々な葬儀の在り方について見識を広めるためのワークショップです。葬儀の話に加えて、お坊さんから葬式の話があったり、花屋さんから葬儀の時の花の話があったり、1年間を通して、葬儀に関わるあらゆる関係者の方々が、葬式について情報共有をする会です。友引の会の由来は、葬儀は友引には行わないということから、その日を利用して、将来のお客さんに情報提供をしているとのことです。
このワークショップによって、生前から自分の最後をどのようにしたいのか?に興味を持って頂き、事前にそのシナリオを考えてもらうのです。本人にとっても、自分の最後を自分の行いたいようにすることができる。このようなことに理解を示す高齢者の方が多く、当初は数名しか集まらなかったワークショップも今では毎月30名から40名位が定期的にあつまります。現在、コミュニティーに参加している高齢者の方々は500名前後にのぼるそうです。
葬儀の場合、故人の意思が明確であれば、その方の意思が尊重されます。そこで、その方々が故人になる前にじっくりと葬儀のことについて考える時間を共有する。葬儀屋さんから本人に事前に情報提供をすることで、決める人=使う人の構図を構築しているのです。葬儀。一見、ネガティブな要素に思われますが、その葬儀屋さんは真摯に取り組み顧客と共に最後を考える。非常に素晴らしい理念を持つ企業だからこそ取り組める発想だと思います。
ユニークな取り組みですね。
エンディングノートとか、そういう小道具も使われているんでしょう、きっと。
高齢者にとっては、自分の来し方を振り返るいい機会になっているはず。写真や遺品を整理(捨てるもの、残すものの区分け等)しておくことは、残される子や孫のためにもなります。
業者、逝く人、残る人、三方にとっていいことですね。
そうですよね、三方良しのモデルだと思いました。