コーラの印象は?と問うと、「体に悪い」「骨が溶ける」「歯が悪くなる」「糖分が多い!」と明らかにネガティブなイメージがあるでしょう。しかし、世界で一番飲まれている炭酸飲料です。私も、何か気分をスッキリしたくなる時は、赤いコーラを選択します。
コーラは体に悪い!というイメージがあるからこそ、コーラにはダイエットコークやカロリーゼロの商品も売れています。非常にユニークですよね。
一方、トクホとつくと、健康とセットであるのがこれまでの常識。商品名にトクホとつければヒット商品になると言われるほど、消費者の間にはしんとしています。
そこにトクホとコーラの組み合わせ。キリンのメッツコーラです。きっとこの商品に対して、誰もが「えっ?」と思ったことでしょう。
しかし、商品構想2年、開発まで3年の苦闘の結果、生まれた商品であるという事を知れば、キリンの本気度合いが良く分かります。
飲料業界では、年間に新発売される清涼飲料は実に1000種類にも及びます。そして、その中から世の中から指示され定番として残る商品はわずか数本。まさに千三の世界なのです。
そんな中、トクホでヒットを飛ばした商品は、ヘルシア緑茶(花王、2004年)、黒烏龍茶(サントリー、2006年)です。飲料メーカー各社はこの商品のヒット度合いを見て、誰もがトクホだ!と思ったことでしょう。
そこでキリンは2009年に食後の血糖値を押さえるトクホ飲料、午後の紅茶ストレートプラスを発売しました。しかし、これは専攻者が既にお茶+トクホの市場を押さえていたので、市場のインパクトは得られません。キリンの担当者は、成功法で攻めるのではなく、独自のポジションを作れないだろうか?様々な疑問視とチャレンジの中、トクホ+炭酸飲料の組み合わせを真剣に考えていたのです。
炭酸=健康ではない。そのイメージを思いっきり使って見たら、炭酸の代名詞でもあるコーラとトクホの組み合わせに行きついたのでしょう。
トクホコーラの開発担当者のインタビュー記事を読んでいると、担当者はギリギリまでコーラの味を追求したようです。それも、当初はトクホ飲料だけに、非常に口当たりが薬っぽい味だったとか。しかし、開発を繰り返した結果、それが普通の味になった。コーラを飲む人は、そもそもコカコーラを飲むでしょうから、このこだわりはある意味、プロダクトオリエントの雰囲気ではありますが、キリンの本気度は十分に伝わってくるエピソードです。
トクホコーラの完成は2010年、その後トクホの申請をして許可が下りるまでに1年半。そして、今年販売されたのです。
トクホコーラにメッツのブランドを付けたのも面白いですね。メッツはキリンが1979年に生み出した炭酸飲料のブランド。トクホコーラにメッツを付けることで、本家のコーラと違いますよ!という点を強調したのでしょう。
さて、トクホコーラの売れ行き。4月の発売から2日間で目標販売の年間100万ケースの50%を達成するという強烈なロケットスタートを切りました。
ジャンクフードとコーラの最高の組み合わせに、少なからずとも健康を意識している人は多いでしょう。そんな人がトクホコーラを選択する。コーラを飲みたいけど、健康に気を使って躊躇する。そのんな人は選択する可能性が高いでしょう。
さて、トクホコーラ。今後の売上推移に注目ですね。
独自のポジショニングを得られないだろうか? 言うは易く行うか難し。きっと苦難だったでしょうが、面白い開発物語があったんでしょう。きっと、トクホというだけでなく、飲料の本質である味や爽快感にも優れているんでしょうね。
閑話休題。トクホが流行っているけど、それだけで飛びつく消費者はいかがなものか? 某食用油の例もありました。疑うばかりはよくないけど、賢い消費者になる必要もありますね。