先日、中国での農業事情について意見交換する機会がありました。当たり前ですが、中国での人口増に伴い農業はビジネスチャンスです。
中国経済はニュースで報道されるように毎年10%近いGDPの伸びを示しています。それに伴い物価も上昇、5年でおよそ2倍近く跳ね上がっています。当然、人件費も高騰しており中国に進出している海外メーカーからの悲鳴は良く耳にする話です。中国政府の発表では、2012年から5年間も毎年13%平均でGDPが上昇すると試算しています。うーん、すごい。
これに伴い沿岸部など中国経済を牽引して来た地域では人手不足が慢性的な問題になっている用です。そのため、中国でも人の手で何かするより機械化を進めている話も最近では当たり前です。2008年より不動産は高等を続け、2010年に政府が介入したためバブルはいつはじけてもおかしくない状況です。そのため資産を持っている方々は次の投資先を躍起になって探しています。一昔は一攫千金を狙えた鉱山開発も国有企業に集中しているため財を成すことは難しいようです。
今年より中国政府はトップの交代があります。そのために政策の転換が考えられます。その時のポイントは、かなり内需にフォーカスしています。当時ヒアリングした内容では、農業に関するポイントが5つありました。
1)外需から内需への転換
トップの交代によって、まず大きな方向性の転換は内需へのフォーカスです。これまで6割を外需に頼っていました。それを13億人の内需市場を取り込むことがメインになります。
2)農業ビジネス
中国人に占める農村の人口は6億から7億程度でほぼ半数以上が占めます。そして都市部の人口と農村部の収入格差は開くばかり。この格差を解消しなければ暴動がおこる恐れが考えられます。従って、農業に力を入れることを急務としています。中国政府は、2004年から8年連続で農業にフォーカスしています。近年の中国内部のメディアでも農業がキーワードになっています。そして毎年麦代が補助金が農業関連についています。中国政府も地方も補助金の約6割を農業関連に充てていることを見ると今後の政策の本気度が伺えます。聞く所によれば、農業関連の貸し出しは金融機関も優先するように、政府からの通達が出ているそうです。
3)本物志向への変遷
中国の消費者は本物志向に変遷しています。一瞬、そうなの?と思いますが、経済の成長と収入の増加を考えると偽物に興味が無くなるのもうなずけます。農産物に関しては、日本産の地域ブランドが中国の高級スーパーで飛ぶように売れている話は有名です。
4)食品の安全
本物志向とともに、食への安全志向が目立って来ています。ある程度の所得がある人の話では、中国産は怖くて食べられない。高くても日本産を買うようにしているよ、と。しかし、大陸での多くの食品はまだまだ日本の安全性の域に達するまでは時間がかかるでしょう。例えば、日本で牛乳の賞味期限といったら1週間程度でしょうが、中国では6ヶ月。何がはいったら、そんなに持つの?と疑問を投げたくなるような設定です。新鮮な牛乳は市場には殆ど出回っていないのです。おいうことは、今後、このような食の安全を支援して行くインフラや施設がどんどん整備されていくのです。
5)自然派と郊外派
北京や上海の都市部は環境が悪く渋滞がひどいため、郊外に観光農園などに行って余暇を楽しむことがブームになっています。自然志向が強くなっているのです。なんだか不思議な話ですね。
結局、成長を遂げている国でも実際の経済の伸びと農業にはかなりのギャップがあるのです。工業が進んで行く一方で、環境や自然、農業をないがしろにしていてはまずい!というのが本音でしょう。従って、農業ビジネスへの投資は自然と増えて行くし、日本の技術に注目が集まるというシナリオです。
きっと、次のようなキーワードに絡んだ日本の企業は、今後の中国の波に乗っていくことでしょう。
◎ 食品の加工技術や加工の機械化が得意な企業。この分野は世界でも日本が一番であり中国は興味を持っている。
◎ 日本の畜産技術。具体的には肉牛と乳牛。特に日本の黒毛和牛は注目されている。年間に15万トンの肉牛の需要がある程度で今後うなぎ上りに上昇する。牛肉一般を見れば、まだまだ品種が悪く畜産技術も悪い。背景は、多くが原始的な育て方なので、肉質が改善されていない。ここは農家の教育レベルや畜産レベルや技術が低いことも理由。日本で注目されていない肉牛や乳牛の技術は、中国ではダイアモンドの原石のように重宝されるでしょう。
◎ 中国では乳牛の安全性も低いようです。上述したように添加物が沢山はいっていて長い保存期間です。これは日本と違って常温流通をしているため限界があるのです。郊外から都市に流通が整備されると流行って行くでしょう。ということは冷温流通の技術は今後中国でも普及して行く、そこに対しての技術提供は価値がでてくるでしょう。
◎ 農機具市場。農業投資に関連して農業技術にも注目が集まります。大企業はもちろん、日本の中小企業の農機具メーカーも進出のチャンスです。
◎ 種と苗にも注目が集まります。日本の品種改良の技術はトップクラスです。特に、トマトといちごは良い技術を持っています。
◎ 園芸。近年、個人需要に加えて、政府の需要が高まっています。2008年のオリンピック、2010年の万博から都市建設に対して園芸が求められるようになっているのが理由です。それに比例して個人消費としての贈答品市場も伸びています。これは上述した自然回帰の兆候でしょう。日本と同様に郊外の自然はレストランには連日都会の金持ちで長蛇の列になっています。
◎ 植物工場。莫大な胃袋を満たすためにはこの技術も書かせません。技術的には日本が優れているので注目は集まっています。
うーん、農業ビジネス。あつい!