先日、アップルストア福岡天神店にて、「新しいスタイルの起業」というタイトルでワークショプを行いました。
メインのメーッセージは、起業=IPOとか、大きな規模とか、競争優位とか、何かすごいことをしなければならない的な発想じゃなくて、もっと小さな規模の起業について議論しました。ひとりが生計を立てるための起業。誰かと数人で無理なく生活できる原資を得ながら自分が好きな事をビジネスにして生きていく起業。
日本では、出口戦略について語られることが少ないです。通常、企業の寿命は経営者のそれよりも遥かに長いです。従って、経営者が元気なうちは良いですが、何かがあったときにどうするのか?このような事を含めて、第三者にゆずる、身内にゆずる、精算する、売却する、など様々なオプションがある事を理解して、そのオプションを行使できるように日頃から準備しておくことが大切です。欧米では出口戦略のひとつにM&Aを利用することは、ある種のステータスであり、そこで得たお金をベースに、ハッピーリタイアするものも入れば、新たに新しいビジネスに投資する人もいます。
しかし、何故か日本では出口戦略は、IPOのみ、というイメージです。そのイメージが大きな、何か特別な事をしなければならない!という起業のイメージに繋がっているのかもしれません。これは、経済が右肩上がりで給料が年々増加していた時代だったらまだしも、現在のように成熟した経済環境ではさらに厳しいことは予測出来るでしょう。
例えば、去年1年で日本でIPOを遂げた企業は22社です。一方、出口戦略のもう一つの選択しであるM&Aは約1700件の実績です。この数字を見ても明らかな通り、M&Aはよっぽど確率が高いのです。しかも、小規模のIPOはあったとしても、IPOはIPOです。一方、M&Aは存在します。先に上げた1700件は、ニュースバリューがある、つまり取引価格が10億円を超える大型のM&Aのみの件数です。国内では、コレよりも小さな案件は頻繁に取引されています、このように考えると、M&Aって悪いイメージだけで実際に知らないままでは勿体無いのです。
M&Aを出口と捉えたら、M&Aを入り口として考える事も可能です。米国のデータでは、M&Aを使って起業した場合、廃業率が一気に低くなっています。通常ゼロからビジネスをスタートした場合、5年間生き残っていうる割合は2割程度です。一方M&Aを利用して始めたビジエンスは実に8割五分も残っているのです。
しかも、米国では小規模のM&Aが盛んです。M&Aの歴史自体が100年以上ある国です。例えば、小規模のM&Aをビジネスブローカレージと称して、中古自動車が朝刊の広告に出ている感覚で、地元のスモールビジネスが売りに出ています。興味がある学生が例えば数百万円の金額を用意して、その日から経営者として経験をつむということが良く行われているのです。
そう、ワークショップでは、学生に1)小さな起業ってありだよね、2)その時にゼロから立ち上げる方法とM&Aで立ち上げる方法もあるよね、という2つのメッセージを伝えることが目的でした。この取組は、始まったばかりです。今後も継続的に行って行きたいと思います。
>中古自動車が朝刊の広告に出ている感覚で、地元のスモールビジネスが売りに出ています。
そ、そうなんですか? さすが米国、という感じです。 「成功はゴミ箱の中に」という本に書かれていましたが、ハンバーガー店のマクドナルドも、そもそも小規模個人店のM&Aから、巨大チェーン化が始まったんですよね。
初めてのビジネスは市場性がない、少なくとも合理的な市場が存在しないので。
従って、行っている当人以外からすると不思議な感じを持つでしょうね!
先日はありがとうございました!!