中小企業の価値算定

2009年6月30日 火曜日

早嶋です。

中小企業の値段ってどのように決まるの?M&Aというキーワードを聞いたとき、だれしもが考えることでしょう。

そこでまず考える事は、買い手は「会社をいくらなら買うか?」と、売り手は「会社をいくらまでなら売るか?」という相反する力学が働いている事です。

もし、会社の値段に相場があれば需給バランスによってある程度の値段が決定しますが、中小企業の評価は一般的に相場がないものです。そのために売買の交渉の場では、常に中小企業の価値における根拠が求められます。売り手は少しでも高く売りたいでしょうし、買い手は妥当な価格で買いたいでしょう。そのための納得の行く根拠付けが交渉のカギなのです。

もし、交渉の段階で売り手と買い手の双方が納得する企業評価に到達したら、それは双方にとって素晴らしい企業評価になるでしょう。中小企業の企業評価において、まず、上記のように相場のないものに値段をつける行為である事を理解する必要があります。

とは言っても、その理由つけはどうするの?という疑問が残るでしょう。そこで通常良くとられている手法を紹介します。大きく3つあります。1つ目は、企業の純資産価値に着目した評価の仕方です。2つ目は、企業の収益価値に着目した評価の仕方です。3つ目は、上場企業の株価から推測して価値を評価する方法です。

ここで中小企業の価値評価において結論を先に言うと、上記の1つ目の手法と2つ目の手法を合わせた方法が一般的です。つまり、その企業の純資産価値に企業の収益価値を加味した評価方法です。

ファイナンスの知識がある方や上場企業に精通されている方は、企業の価値評価においてDCF法を想定されると思います。しかし日本の中小企業の現実をみるとキャッシュフローの概念がまだまだ乏しく、将来のキャッシュフローを予測する作業自体が困難で説得力が欠けてしまうという理由より採用されません。

では簡単に評価方法を説明しましょう。企業の純資産価値を便宜的にストック、企業の収益価値をを便宜的にフローと呼びましょう、中小企業の値段はストックとフローを加味した価格といえます。

ストックの算定です。簡単に考えると、ストックは企業の資産と負債を時価評価に戻したときの差額になります。例えば、売掛債権などで回収の見込みが立たない部分は評価から減じます。例えば、不良在庫なども簿価ではなく適正な価格に算出しなおします。例えば、不動産なども取得時の価格ではなく現在の価格に評価しなおします。要は、中小企業のB/Sを適正な時価評価に戻して考えるのです。

フローの算定です。中小企業のフローは営業権とも呼ばれますが、これを見るための指標もいくつかありますが、ここでは税引き前利益と考えましょう。しかし、この税引き前利益もそのまま見るのではなく修正して見ていきます。例えば、中小企業の場合、役員報酬が余りにも大きかったり、逆に過小評価されていたりします。これを適正とされる水準に戻します。交際費や会議費なども、内容を細かくチェックして不要だと判断したものは差し引きます。さらに、減価償却の再計算や地代家賃についても何か隠れていないか?いろいろ探します。フローの算定もストックの算定と同様に、その企業の実力を見るために適正な評価に戻して考えるのです。

さて、フローの算定が終わったらそのフローの何年分を営業権として評価するのか?です。この考えも一概にきまりはありませんが、収益が安定している企業であれば4年とか5年。収益が比較的不安定な場合は3年程度と短くなります。

総じて考えると、中小企業の企業価値は次のようになるわけです。

企業価値=ストック+(フロー×3~5)

ここでお気づきの方がいると思いますが、将来的に会社の出口戦略の1つとして売却を考えているのであれば、ある程度は内部留保していくことも大切なのです。税金対策ばかりして手元に現金を残さない活動を長年続けている中小企業であれば、いざ評価を算定しようとすると、実力より過小に評価されるのはある意味仕方のないことかもしれません。

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